仁義なき戦い 完結編

1974年、日本、深作欣二監督作

広島のヤクザたちの抗争は一旦終息し政治結社となって団結することになるが、結社内での権力争いが再び始まる。

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仁義なき戦い』シリーズの最終章。この後にも同様のヤクザ映画は作られるけれど本家のシリーズとしてはこれが最後になる。でも脚本がこのシリーズを支えてきた笠原和夫から高田宏治に変わっている。そのせいかテンポが少し違う。細かいエピソードが矢継ぎ早に繰り出される今までの作品と違っている。監督は同じなのに脚本家が変わるとこうも違うのかとも思う。
出演者も千葉真一が演じた役を宍戸錠が演じていたり室田日出男が演じていた役も違う。そのせいか凶悪な感じが薄れてしまっている気がする。

シリーズを通して観て、結局この映画というのは一貫して組織に翻弄される個人の悲哀を描いた映画で、それが観客の身につまされるのだと思う。組織の中で生きていくのに主義主張を曲げたり、そもそもそんなものはなかったり、そんな人間模様が身近にあるものだからヤクザ映画の形を借りたその物語に自分の姿を映して共感するのだと思うし、その中で組織に対して一本芯の通った筋を通す男として菅原文太がいて、自分にはできないそんな生き方に美しさを感じるのだと思う。

でもこの映画の中で描かれるような、卑怯でも何でもいいから組織の中で生き残ろうとする人は未だにいるし、寧ろそういうことを嬉々としてやってる人もいる。あーゆー人たちはこの映画を観てどう思うのだろう。自分を卑怯極まりない金子信雄田中邦衛に共感したりするのだろうか。人間の醜さを描いた映画なのに。