呪いの言葉の解きかた/上西充子 著

政権の欺瞞から日常のハラスメント問題まで、隠された「呪いの言葉」を徹底的に解く

呪いの言葉の解きかた

呪いの言葉の解きかた

 

 少し前に政治家の答弁について「ご飯論法」という説明がされていた。

 質問に答えてはいるけれど質問の趣旨に答えているわけではない。目くらまし、煙に巻く、誤魔化し、そのようなもので、はっきり答弁しない所作が昨今よく見られる。ごはん論法だけでなく、答えのない質問をなげかけて相手を黙らせたりするような、そんな詭弁に対抗するにはどうするか、といったことが実例をひいて書いてある。

 

そんな詭弁を使う人たちとは話したくないし近付きたくもない。そのような言葉や人に会った時になぜこの人はこんな言い方をするのだろうと考えてしまう。

政治家のご飯論法で言えば、はっきり答えたくないことがあるのだろうと推測する。そうでなければ聞かれた事に答えればいいのだから。国会では虚偽の答弁は罪になるわけだし。

本書の冒頭に「嫌なら辞めればいい」というのは呪いの言葉だと書かれている。仕事の不満を述べる人に投げかけられる言葉だが、そう言われてもすぐに仕事を辞められるものでもない。「我慢せよ」という意味を違う言葉で言っているにすぎない。

でもこの言葉を投げかける人の中には、不満を述べる人に対して「俺は黙って我慢しているのにお前は」という苛立ちが隠れている。ただ単に苛立ちが発動してそれを厭らしい形の言葉で相手にぶつけているに過ぎない。そこには、我慢していることが誰にも認められない苛立ちがあると思う。

なんでも我慢して黙っているだけでは改善も改革も改良も有り得ない。膿を出してそこを治療しなければ何事も改善しない。だから正当な批判を封じるのことは大抵の組織が腐っていく原因になる。

でも「嫌なら辞めればいい」と言う人は黙って耐えている。黙る必要も耐える必要もないのに。