向日町競輪
基本的にギャンブルはしないのです。ギャンブルで失う千円があれば欲しい物があるから。千円あれば中古レコードの安い物が1枚買える。音楽の海は果てしなくその全てを知ることはできないけれど一枚のレコードを買えばその一部分にだけでも触れることができる。だから千円でも失うわけにはいかない。そういう思考回路で生きてきました。つまらない奴だと言われるかもしれないけどそうやって暮らしてきたのです。
先日、梅田のディスクユニオンに行きました。あーゆー所に行けば、あれも欲しいこれも欲しいしかし財布にこれだけしか入っていないから厳選してあれとこれにしよう、という思考回路になるのですが、なんだか何も欲しくなかった。正確に言うならば欲しいとは思ったけれど、買って帰っても仕方ないのじゃないだろうか、みたいな気分になった。ビデオ屋に行ってはみたものの棚に並んだ沢山のディスクを前にして何も見たくなくなるような感じ。アクセルよりブレーキが勝ってる感じ。
たぶん気力が萎えてる。欲望が心の中から湧いてこない。心が元気じゃないからそうなる。
だったらどうすればいいのか。いっそのこと金を失えば焦る気持ちが湧いてきて何とかしなければならないと思うのかも。追い込まれれば気力がどうこうとか言ってられない。切羽詰まった時に底力が発揮されるかも。夏休みの宿題もそうやって乗りきってきたはず。ギャンブルとかどうなのか。
駅でスポーツ新聞を買って競輪の載っている中ほどを開き暗号のような誌面に暗澹たる気持ちになる。何も分からない。スマホで検索しつつ暗号文を解読していくが膨大な情報の一部しか分からない。インターネットに情報が溢れているなんて嘘。競輪面の読み方を誰も教えてくれない。
それでもなんとなく車券を買ってみる。そしてレースを見つめる。あの番号の人とあの番号の人に頑張って欲しいと思いながら。そう思うことで少しだけ気分が高揚する。当事者になって少しだけ関係している心持ちになる。
競輪選手はS級とA級に分かれていて、毎年S級下位とA級上位が入れ替わるそうです。しかしA級の選手でも1位を9連続で獲ると特進といってS級に上がれるらしい。
今日の向日町競輪、A級決勝の12Rに出場した小森貴大選手は8連勝中で、あと一勝でS級特進がかかっていたレースでした。そして見事1位入賞。レース後、女子競輪決勝で1位だった石井貴子選手と共に表彰式があり、まばらになった観客席のおっさん達から拍手とおめでとうの声が掛けられていた。
7つのレースに賭けて2つが当たった。結果プラス。ちょっと感動もした。なんだかしみじみと面白かった。こんな気分になるとは思わなかった。
インタビューを受ける小森選手と石井選手