創作の極意と掟/筒井康隆 著

多数の項目を挙げて、小説を書く為の心得を記した一冊。

創作の極意と掟

創作の極意と掟

 

 例えば、『羅列』という項では

清涼飲料水の空瓶、紙コップ、新聞紙、西瓜の皮、筵、船虫の死体、檜皮、鼠の死体、七色唐辛子入れの竹筒、縄、底の抜けたウクレレ、蛙の死体…
脱走と追跡のサンバ筒井康隆

といった、下水道の水面に浮かぶ汚物を描写した文例を取り上げ、それが催す効果を示し、なんでも繰り返せばいいってもんじゃないという難しさを、他の作家の文例を取り上げて解説してくれています。

他の項でも自作、他の作家の小説からその項目に合った作例を提示して解説し、時に逸脱し、と読んでいて楽しく為になる。文章作法という書ではないけれど、小説を書いたり文章を書く工夫に苦労している人にはとても面白いのじゃないでしょうか。自分はとても面白く読みました。

その分野のプロであるのだから当然ではあるだろうけれど、文章例として提示される古今東西の小説の豊富さにも感心しました。どんな職業でもその業種の基礎、古典、最新の動向というものはチェックしておかなければいけないだろうけど、やっぱり凄いですよねと感嘆するばかりです。

この本に書いてあることを全て頭に叩き込んでおれば人に読んでもらえる小説が書けるどころか、プロの作家にでも成れるのじゃないだろうかと思うのだけど、筒井先生はそれが全て頭に入っていて血肉となっていることを思うと、これまた愕然とするのでした。