人口論/マルサス 著

18世紀末の英国人による人口に関する考察。

人口論 (光文社古典新訳文庫)

人口論 (光文社古典新訳文庫)

 

 マルサスは本書の中で

人口は、何の抑制もなければ等比級数的に増加する。一方、人間の生活物資の等差級数的である

ということから

人口の増加は食料によって必然的に制限される。
食料が増加すれば、人口は必ず増加する。
そして、人口増加の大きな力を抑制し、じっさいの人口を食料と同じレベルに保たせるのは、貧困と悪徳である。

としています。
要は、人口の伸び率に対して食料増産の伸びは追いつかないので、人口が増え過ぎると抑制の働きが生じるということが書かれています。18世紀に書かれたものなので、現代のように国境を自由に超えて物資が流通するという時代感覚とはほど遠いし、国内での農業による食糧生産が主眼におかれているので、その点は考慮すべきだろうけれど古典として面白いです。

人口論では今の日本の少子化というものはどう捉えられているのでしょうか。マルサスの言う様な食料の供給が不足しているからというものではないはず。
動物は子が生存する可能性が低ければ多産です。ということは生存の可能性が高いと子供を産む数は低くなるということで、人間の場合は社会が安定的であれば一組の夫婦がもつ子供の数は少なくなるでしょう。時代と家族の変遷を追えばそれは証明できる気がします。

では少子化ってなんで起こるんだろうと考えると、やはり集団意識が人口を抑制する向きに働いてるのではないでしょうか。それは経済的停滞なのか、社会不安なのか分からないけれど、何かしらの集団意識は働いているように思う。
個々人は、なぜ結婚しないのか、なぜ子供を作らないのか、等々個人の理由ははっきりとあるのだろうけれど、集団として見た場合には何らかの傾向というようなものは見えてくるはず。統計という手法がそれを浮き彫りにする方法なのだろうけど、今やインターネットで個人がその心情を吐露する時代なので、彼等の主張を集めて解析するというようなコンピュータの力による手法が編み出されれば集団としての意識が浮き彫りになるのかもしれないなあ、なんてことも考えました。

現代の人口論というのも現代の学者さんによって語られていると思うので、今の時代に更新された人口論も読んでみたいです。

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