日本会議の研究/菅野完 著

現在の安倍自民党政権に影響力をもつと云われている日本会議という団体はどのようなものなのか、その姿を浮き彫りにする本。

日本会議の研究 (扶桑社新書)

日本会議の研究 (扶桑社新書)

 

 保守であり右翼であることを自認し、はてなブロガーでもある菅野完 aka noiehoie氏に注目したのは、この記事を読んでからでした。

保守主義者が反原発で何が悪い! - 麻布論壇

鈴木邦男氏や野村秋介氏の著作を読んで多少なりとも右翼、民族派的な思想に影響を受けていると自分は思っているのですが、最近のネトウヨや新保守というような人達の意見には到底賛同できない。自分は、原発に反対だし、安保法案の成立過程にも疑問を持っているし、安倍政権の派遣労働法改悪も最低だと思っている。自分は寧ろ左翼的なんじゃないかとさえ思っている時にこの記事に出会いました。
記事では、反原発が左翼のものであるかのように語られる中、右翼としてなぜ原発に反対するかが理路を整えて語られています。この記事を読んで本当に素晴らしいと思ったし、大いに納得すると共に、自分が言語化できないものを言ってくれたという爽快観があって、この人は信用できる書き手だという信頼感が生まれました。

そして本書『日本会議の研究』も負けず劣らずの素晴らしい内容でした。
日本会議という団体が少しずつ話題になってきていたので、名前を聞いたことはあったけれど、本書を読んであらためてその出自を知りました。
膨大な資料と取材を裏付けとして少しずつ明かされるその正体を読み進めていくのは、芳醇な歴史ミステリーを読むかのような読書体験で、一言で言えば超絶的に面白い、でした。

大まかにまとめると、日本会議日本政策研究センターという団体が現在の自民党安倍政権に深く関わり影響力を持っている。そして、その2団体の成り立ちは生長の家という宗教団体の出身者が活動していて、旧生長の家とも云える生長の家原理主義的考え方が彼等を突き動かしているというものです。

本書は、特定の宗教出身者の一群が政権とその政策に大きな影響を与えているという姿を浮き彫りにしています。それを陰謀論的に読む人もいるみたいだけど、そうじゃないと思います。彼らが政権の全てを操っているというような書き方はしていない。影響力を持っているということを明示しているに過ぎない。
また、特定の宗教の信者が政治活動をすることを非難しているわけでもない。ましてや新宗教であることを懐疑的に見ているのでもない。ただ、生長の家の出身者が学生運動の頃から地道に活動して、現在の影響力を及ぼす勢力になっているという事実だけを示している。
本書の中では彼等を批判する部分はとても少なく、彼らが持っている現行の日本国憲法を否定するという反憲的、立憲主義の破壊という姿勢を唯一批判しているぐらいです。

そのように非常にフラットな視点を持っていて、黒幕を暴くというものでもないし、カルトが政権を操っているというというものでもない。陰謀論という視点では全くない。
著者は寧ろ、彼等のやり方とその理念を政治的に実現しようとする熱意と執念に感服しているというところさえある。
これをどう捉えるかは読者に委ねられているという感じがします。これを読んでどう考えるかが大事なのじゃないでしょうか。

読後思ったのは、これほどの胆力を持ってして自分達の理念を追求しようとするその原動力を与えた、生長の家、その創始者の谷口雅春という人は一体どういう人なのだろうかということに興味を持ちました。又、谷口雅春が大正、昭和に政府から弾圧を受けた大本教の出身者だったことや、幸福の科学大川隆法の親が生長の家出身者であることなど興味は尽きないです。ここら辺の事って日本の近代史の表には出て来ないけれど大きなうねりのあるものだという感じがします。

それと、そんなに影響力のある団体なら自分も加入したい、何らかの恩恵があるのでは、なんて奴が現れないのかな、とも思いました。強い者にすりよって行く人間というのは必ずいるものだと思うので。

なんだか入手し難いみたいですけど、超絶的に面白いので是非、今、読んで欲しい本です。