日本が好きでなぜ悪い!拝啓、『日之丸街宣女子』から思いを込めて/富田安紀子 著

漫画家である著者が『日之丸街宣女子』という漫画を発表したことによる顛末と彼女の思想信条が語られる本。
ネトウヨと言われる人たちの考え方というものに触れてみたくて読んでみました。

 『日之丸街宣女子』という漫画は読んでません。ネットで粗筋を拾うと反韓デモに巻き込まれた女子を軸にデモ側を擁護する内容みたい。合ってますでしょうか。
著者は「ネトウヨ」ではなく「新保守」という用語を使っているので以下、それに倣いましょう。以下乱文。

 

マンガ嫌韓流』が売れたのに他の出版社が同様の書籍に参入しないのはおかしい。資本主義の理路から言えば儲かるものは出版されてもいいはずなのに、そうさせないのは韓国朝鮮人の損になるからだ
と断罪しておられますが、違うんじゃない?そんなことで金儲けするのは皆おかしいことだと知っていたからじゃないでしょうか。

新保守的漫画を上梓したことで、様々な方面から批判を受け、連載中の漫画も中止になったという顛末が書かれています。
確かに批判は元より罵声を浴びれば辛いと思う。作品の批評は自由とは云え、そのしんどさは文章から伝わって来る。でも出版社がその圧力に屈して連載を中止したというのは違うんじゃない?それこそ資本主義の理路で、書籍を売る為に妨げになるから排除されただけではないでしょうか。

著者の思想がどこからきているのかが垣間見えるのは
著者のご母堂は戦時中に学徒動員で軍需工場で働いていて空襲に会っている。その母親は信じて戦った戦争を否定する戦後の論調を嫌っていたということが書かれている。
学校教育云々もあるけれど、親の考え方というのはやっぱり一番子供に影響しますよね。この辺はよく分かる。反発して逆にいくということもあるし。

新保守的思想信条をもつに至った経緯についてはとにかくネット情報みたい。ネットって望む情報は手に入れやすいけれどそうでないものに巡り合うのは中々難しいんですよね。漫画の取材ではかなりアクティブに活動されている方のようなので反対意見にも接してみるということが自発的にできなかったのかな、と思うと少々残念です。

愛国心が基で発言しているのに何がおかしいのか?という論が全編に漲っているのだけどそれはどうなんでしょうね。
ポル・ポトの本を読んでるんですが、言わずと知れたクメール・ルージュの大虐殺の指導者であるポル・ポトも本来はフランスの植民地、腐敗した王政からカンボジアを独立させようとしていたんですよね。その後なぜ大虐殺が起こるのかはこれから読むんだけど、いわばポル・ポトも愛国者なわけです。極端な例ではあるけれど愛国心というものが全ての免罪符になるわけじゃないです。

愛国心というのは咎められるような感情ではないし、寧ろ良い感情であるとは思うのだけど、内側を好きだからといって外側を嫌うというのはイコールでは繋がらないのですよね。なぜそんな考え方になってしまうのかは読了後も謎。