墨攻/酒見賢一 著

戦国時代の中国、ある小城が大軍による攻撃を察知し援助を乞うたところ、やって来たのは、ただ一人の使者だった。男は墨家という戦術家集団の一員であり、自分の指図に従えばやがて来る大軍団から城を守ることが出来るという。

墨攻 (新潮文庫)

墨攻 (新潮文庫)

 

 中国を舞台にした歴史小説です。墨家という思想家集団がいたことは歴史的事実のようですが、実際に戦場に出向いて戦略を請け負ったことや、その戦場での活躍ぶりは想像のものであるようです。

主人公である墨子の革離というキャラクターが軍師として采配を振るい、大軍から小さな城を守り抜くという物語で、英雄譚として面白く読んだのですが、なぜこういうお話を読んで面白いと感じるのでしょうか。
現実では、責任者だとかプロジェクトリーダーなんてのが的確な采配を振るうなんてことは殆どないわけで、下々の身としては「無駄に人を動かすなよ」とか思うわけで、下っ端が壊れても兵隊が一人死んだくらいのことでしかないわけで、そういう死屍累々の犠牲の上に責任者の功績なんてものは成り立っているわけで、
そう思うと作中に出てきて死んでいく庶民にこそ感情移入して良さそうなものなのに、こういう英雄譚というものを読んで面白いと思ってしまう自分というものは何故なんでしょうかね。