東京家族

2012年、日本、山田洋次監督作
広島から東京へ息子、娘達に会いに来た老夫婦のお話

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言わずと知れた小津安二郎監督の『東京物語』の山田洋次版です。物語の構成はほぼ小津版を踏襲しているが、『東京物語』では出征して戦死した末っ子は妻夫木聡演じる舞台美術の青年に、そして原節子が演じた戦争未亡人は妻夫木の恋人である蒼井優に置き換わっている。老婦人が故郷に帰って亡くなるところが東京滞在中に亡くなってしまうというところも少し違う。

東京物語』と比較するのは避けられないが、その辺りは言う必要もない気がする。なにせ『東京物語』は映画史に残る傑作中の傑作なのだから。戦争直後という時代背景がまるで違うのだから違いを述べたてても仕方がないように思う。それよりも現代版『東京物語』をみせてくれた山田洋次に感謝したいような気持。古い映画は傑作とはいえやはり観られる機会が損なわれていく。それをこんな形で現代に蘇らせてくれるのはとても面白い。企画がなくてつまらない映画を作るよりもこういうことを日本映画はどんどんやればいいと思う。過去の傑作に再び日が当たるという意味もあると思うし。

大体ね、こういう母親が亡くなるという映画は俺は駄目なんですよ。駄目っていうのは良くないという意味じゃなくて身につまされるというか涙なしでは観られない。ベッドの周りに家族が集まっているというシーンだけで涙が出てしまう。吉行和子の老婦人がとても良かったので尚更だ。
山田洋次の映画は画面が構図に凝っているとか配色がどうとかそういう凝った風に感じさせないのがとてもプレーンで日常を切り取っていると思わせて、そいうところが余計に身に染みる。

俳優が個性派揃いでした。妻夫木聡が特に良い。唯一『東京物語』に登場しない人物を演じるわけで、彼に山田洋次のオリジナリティが凝縮しているような気がする。吉行和子の老婦人も素晴らしかった。彼女の演じた優しい母親像のせいで余計に泣けてしまった。
橋爪功もとても頑張ってる。でもごめんなさい。笠智衆はやっぱり偉大だ。

 

東京家族 DVD

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