デューン 砂の惑星 PART2

2023年、米国、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

惑星アラキス、皇帝とハルコネンと策謀でアトレイデス家は滅亡したかに見えたが、長子のポール・アトレイデスは砂漠の民フレメンと共に反攻を企てていた。

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大作SF映画として文句なし。面白かった。
PART1も砂漠の惑星に入り込んだような没入感があって好きだったけれど、テンポがゆっくりだったのは否めない。でもこのPART2は怒涛の展開。陰謀と策略、戦闘と戦争、次から次に物語が展開していって長尺の映画だということを感じさせなかった。

SF映画の醍醐味は見たことがないような異世界をビジュアルで見せてくれることにあると思うけれど、その意味でも色んなSF的ガジェット、異教の世界、そして宇宙、と色んな世界を見せてくれた。端的に楽しい。

宮廷内での権力の駆け引きからくる陰謀と策略みたいな話は映画にすると判り難くなったりするものだけれど、観ていてすっきり入ってくる。物語の整理と脚本が上手いのだろうなと感じた。

PART2で完結だと思っていたけれど、これは続きがある感じですよね?

不思議惑星キン・ザ・ザ

1986年、ソ連ゲオルギー・ダネリヤ監督作

技師の男は街で学生に「宇宙人が困っている」と声をかけられる。宇宙人と名乗る男の装置を不用意に押してしまったことで男と学生は砂漠の惑星に転送され、そこから地球へなんとか帰ろうとするお話。

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『DUNE PART2』が公開になったのでPART1をおさらいしておかねば、と思ってアマプラを覗いてみていたら、ついポチッと『不思議惑星キン・ザ・ザ』を観てしまう。

確かに不思議。手の平サイズの物質転送装置で銀河のどことも知れない星に転送されるなんて。その上、砂漠ばかりで水の無い星、空中を飛ぶ乗り物、住人は支配階級とそうでない者に別れていて階級差別が酷い、上位の者に表す敬意の仕草がまぬけ、等など不思議なことが沢山ある。不思議満載。

あれやこれやのトラブルが頻出しなんとか地球に帰ろうとする地球人二人のお話だけれど、SF的設定は微妙。銀河のどこかの星系のある惑星、程度のアンリアル設定。それでも絵的に面白いのでワクワクする。広大な砂漠はソ連領内のどこかで撮ったのだろうか。かと思うと退廃的な工場のような奥行きのある場面がある。螺旋階段の下層に砂が流れ込む映像や砂漠の地下に住人が沢山いる群衆シーンなど、はっと驚くような、というかどこに金をかけているのか、と思わせるシーンがあり退屈せずに観続けられる。たぶん子供だったら一生心に残るくらいのワクワクストーリーだと思う。

権力者が威張っていて階級差別があるところなんかは当時のソ連の社会を皮肉っているのかも知れないけれど今となってはもう分からない。でもそんなことが分からないで観ていても楽しい映画。カウリスマキ映画に通ずるテンポ感がある。

アメリカ映画の文化副読本/渡辺将人 著

〈7つの文化〉で紐解いていく「アメリカ」。お馴染みの著名作品から日本では劇場未公開の知られざる個性派作品、Netflixオリジナル作品やAmazonプライムなど配信系オリジナルの映画ドラマまで数多くの作品を幅広く紹介。

アメリカ映画の中で、アメリカ人なら知っていて当然、常識、そんな事柄を詳細に解説してくれている本。アメリカ映画で舞台となる都市と地域が表す意味、宗教や人種がどのように捉えられていてどのように機能しているか。それが分からないと映画を観ても笑えなかったり理解できなかったりする事柄が書かれている。

例えば、先日観た『ボーはおそれている』という映画は母親が全てを仕組んで監視していたというオチだったけれど、これはユダヤ人の母親が子供に強く干渉するジューイッシュ・マザーというものがあるらしい。そういうことが書かれていて、あらためて知った。というか、知らんがな、の世界。特に大学と進学については知らないことが多かった。

ただ、こういう本を読んで予備知識を身につけて映画を鑑賞するのも手だろうが、映画を沢山観ることによって「アメリカってこんな風になってるんだなあ」と学ぶことも多い。映画はただの娯楽に見えて文化の輸出という意味では大きなものなのだと思う。

ボーはおそれている

2024年、米国、アリ・アスター監督

独身中年男のボーに母親が怪死したと連絡が入る。彼は母の埋葬のために帰ろうとするが不幸な出来事ばかりが起こる。

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ヘンテコな映画。
予告編くらいしか観ずに予備知識なしで観に行った。アリ・アスター監督なので結構楽しみにしていたし、この監督といえば『ヘレディタリー/継承』、『ミッドサマー』の監督なのでホラー映画だと思うじゃないですか。でもあんまり怖くないの。それよりもホアキン・フェニックスが演じる主人公のボーに不幸ばかりが降り掛かってそういうコメディーみたいだった。矢口史靖監督のデビュー作『裸足のピクニック』もそんな喜劇だった。
でも結末は違う感じ。巨大な陰謀だったみたいな。それもホラー映画の『キャビン』が登場人物の行動を全て監視していて大きなシステムが裏で動いていた、みたいな映画だったと思うけどうろ覚え。

ホラーではないしコメディとしても笑えなかったし、そもそも巨大な謎が隠されている、みたいな展開でもなかったので、どう観ていいのか分からなかった。途中の舞台劇のところも他の展開と遊離している感じだったし。よく分からない映画と言えばそうかも知れないけれど、物語の展開は理解できるから分からない映画というわけでもない。でもなにか感性で面白いと思えれば良かったのだろうけど、そんな風にもならなかった。映画としてよくできているというのは頭で分かるんだけど。

最近、本を読んでも途中で投げ出すことが多くて感性が麻痺している。興味や関心が薄れていて鈍くなっている。いけないと思うけれど自分ではどうしようもない。

哀れなるものたち

2024年、アメリカ/イギリス/アイルランドヨルゴス・ランティモス監督

天才外科医によって蘇った若き女性ベラは、未知なる世界を知るため、大陸横断の冒険に出る。時代の偏見から解き放たれ、平等と解放を知ったベラは驚くべき成長を遂げる。天才監督ヨルゴス・ランティモスエマ・ストーンほか、超豪華キャストが未体験の驚きで世界を満たす最新作。

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結構前から楽しみにしていた映画だったけれど、淡々と観てしまった。
つまらなかったわけではない。そこここに面白くなりそうだという予感はあった。けれど、そうなることなく映画は終わってしまった。
例えば、ベラの元夫が登場した展開では「ここからどうなるのだろう」という期待があった。あったけれど、その後の展開には「ああ、そうなるんですか、ふーん」みたいな感想しか持てなかった。結構びっくりするような結末だったけどね。でもそんなに驚きはなかった。

なぜそうなったのかと考えると、冒頭でこの映画はファンタジーだと宣言しているから、それ以降にどれだけ突拍子もない展開がおとずれても「まあファンタジーだから」と思ってしまう下地ができてたんだと思う。ファンタジー映画の展開にあれこれ言っても仕方ない。リアルじゃないとか理不尽だと言っても仕方ない。ファンタジーだから。

それでも豪華なセットと衣装、幻想的な街並みなど目を楽しませる要素はいっぱいあった。でも楽しめなかった。本当に感想は無。つまらないとも面白いとも思えなかった。ただ無理やりひねり出すとすれば、自由を求める生命力の原動力のひとつが性愛だということは分かるけれど、こんなに直接的に描かなくてもいいんじゃないの、くらいの感想。