新仁義なき戦い 組長最後の日

1976年、日本、深作欣二監督作

関西ヤクザVS九州ヤクザの抗争の中で翻弄される菅原文太の物語

https://www.youtube.com/watch?v=U3J6yfQw8C4&t=97s

仁義なき戦い』から『新仁義なき戦い』と続いた実録ヤクザ映画の最終章。この後に工藤栄一監督作や、ずっと経ってから阪本順治監督作が続くけれど深作欣二監督作としてはこれが最後。感想はというと、正直もうしんどい。

物語は、九州ヤクザ連合の下部組織に所属する菅原文太が親分の仇を討つ為に関西ヤクザの組長を殺しに行くことで終焉となる。
1976年だと、大阪では山口組と他の組との抗争が現実に起こっていた頃で、本作で関西の坂本組とされているのは明らかに山口組がモデルだと思われる。なので九州の名もなきヤクザが山口組の組長を暗殺するという、その世界では有り得ないような夢のお話ということだろう。ファンタジー

仁義なき戦いシリーズをずっと見てきたけれど、今の日本映画とは本当に違うなあと。あまり日本映画を観に行かないけれど、映画館に行くと上映前に近日上映の映画の予告は沢山あって日本映画の予告も観る機会が多い。でもその殆どに食指が動かない。どれも「人情話やん」としか思えなくて。

先日『マスカレード・ホテル』という昨年の日本映画をビデオで見たけれど、長澤まさみが働くホテルで殺人予告があったのでキムタク刑事がホテルマンに成りすまして潜入捜査するという映画だった。ホテルでの仕事の大変さを描くのに、無茶な客に言い分にも従うとか、無茶な客だと思ってたら心温まる事情があった、みたいなことで、殺人事件の方はどうでもいい話で、結局人情話がメインかい、みたいな気になった。心温まるちょっと良い話とか映画でわざわざ観たくない。

それに比べて『仁義なき戦い』シリーズには、ちょっと良い話は皆無。いや、菅原文太だけは全編を通じて男としての行き方の模範を示しているのでいい話なのかも知れないけれど、そこで描かれるのは卑怯と臆病と保身と裏切りみたいな負の感情と行動のオンパレードで、今の日本映画が極力排除しようとしている要素ばかり。時代がまだまだ野蛮だったということなのかも知れないが、現実の生き辛さみたいなものが実際に身近にあるのにそれを描かないのはファンタジーでしかないから。ファンタジーでもただの夢の世界じゃなくて現実の何かが込められていないと観る価値があると思えない。

とはいえそんなお話ばかりをずっと観てるのも正直ちょっとしんどくなってきた。もうちょっと観るけど。