フォードVSフェラーリ

2020年、米国、ジェームズ・マンゴールド監督作

スポーツカーの生産を目論むフォードは、フェラーリを買収しようとするが、エンツォ・フェラーリに「醜い工場で醜い車を作っていろ」と一蹴される。
怒ったフォードは、ル・マン24時間レースでフェラーリに勝つことを目標として、そのレースで勝利した経験を持つシェルビーを雇い入れ、シェルビーは凄腕のレーサー、ケン・マイルズをドライバーとして勧誘する。
かくしてシェルビーとマイルズたちは、フォードGTを開発しル・マンでの優勝を目指すのだが。

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良い雰囲気の映画だった。主役のシェルビーを演じるマット・デイモンとドライバー、クリスチャン・ベイルは言うに及ばず、その他の登場人物たちの殆どに好感が持てる映画だった。

スポーツカーを開発してフェラーリに勝つという目標の中ではフェラーリこそが敵で打ち負かす相手だけれど、敵はフォード社内にもいて、副社長が主役の二人を自分の意に沿うよう動かそうとする。でも二人はなかなか言う事を聞かない。副社長の人物造形は、組織を統括する人間の傲慢さを描いていて、そういう人間にストレスを感じたことがある人は多いはず。

ル・マン耐久レースの終盤、フェラーリに勝利することが確定したフォードは1,2,3位を独占するだけでなく、1位で走っていたマイルズに速度を落とさせて3台同時にゴールインして見せろとこれまた副社長が無理な注文を出す。ドライバーのマイルズはこれに従わないかのようだったが結局スピードを緩めて3台並んでゴールインするが規定で一位にはなれなかった。
この場面は副社長に屈したようでいて歯がゆいようにも思うが、マイルズは実質的な目標には達したのだからそれでいいのだ、という諦めのようなものがあって、苦いけれど大人の結末だなと思う。
それと映画『ミッドナイト・ラン』は、賞金稼ぎの男が犯人を見つけて時間までにLAまで連れて帰ってくる話だったけれど、時間までに連れて帰ってこれたという目標は果たしたのだから、と空港で犯人を逃がしてしまう結末だった。あれを思い出した。

主役の二人以外にも、マイルズの妻を演じたカトリーナ・バルフは夫を献身的に支えながらも肝っ玉のある女性を演じていてとても素敵だった。また、シェルビーのチーフメカニックであるフィル・レミントンを演じたレイ・マッキノンも頼りになる男で素晴らしかった。

嫌な奴はきっちり嫌な奴で、良い人はその所作、振る舞いで好人物であることが滲み出るような登場人物たちで、映画を観ている間気分が良かったのでした。レースの場面も格好良かったし。