ミッドナイト・ラン

1988年、米国、 マーティン・ブレスト監督作品

賞金稼ぎの男は保釈金融の店からある会計士を捕まえて連れてくるように依頼される。その会計士はマフィアの大物から金を盗んで慈善事業に全額寄付した男だった。ニューヨークで会計士を捕まえたが、様々な妨害や裏切りがある中で賞金稼ぎはなんとかロサンジェルスまで男を連行しようとする。

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3連休に暇だったので、バイオハザードシリーズを全作観てみようかしらと思って観始めて、最初は「ミラ・ジョヴォヴィッチってほんまに美人やな」とか思って観ていたけれど、2作目でもう飽きてしまって、そういう時って何したらいいか分からんくなるから、昔見て面白かった映画をもう一回観てみようってなる。音楽でも好きなアルバムは何回も聴くから。映画も同じように何回も観る作品というものがあって、それが本作『ミッドナイト・ラン』なのです。

男の映画だと思う。登場人物は賞金稼ぎの男がロバート・デ・ニーロ。会計士がチャールズ・グローディン。他には保釈金融の社長と事務員、もう一人の賞金稼ぎ、FBI捜査官、そしてマフィアのボスと間抜けな手下2名、主要な登場人物はみんな男子。賞金稼ぎの元奥さん、娘、会計士の妻、などほんの少し登場する人物たちに女性がいなくもないが、基本は男の映画であり、おっさんたちがアメリカ大陸を右往左往する映画なのです。だから男の哀愁に充ちているのです。

不毛だと思っているけれど、世代間闘争のような話になると中年男というのは、世の中を牛耳っていて若い世代の意見に耳を貸さない保守的で融通のきかない社会を停滞させている張本人のようにまつりあげられるわけです。セクハラとかも平気でするような若者の女性の仮想敵として最も適した存在とされる。なので、弱い者を笑いの俎上にあげるとそれは弱い者いじめになってしまうけれど、前述のようにおっさんは強い者と設定されているので笑い飛ばしても良いとされるのです。可哀想だけどそうなのです。

本作では、その通りにおっさんたちが裏切ったり裏切られたり、盗聴したりされたり、嘘ついたりつかれたり、あっちに飛行機で飛び、こっちに列車で移動し、カードが使えなくなって金がなくなったり、煙草をぱくられたり、殴られたり、転んだり、と全編可笑しい。もう本当に誰も彼も一生懸命働いてるんだけど、誰も何もうまくいかないというおっさんたちの苦闘が描かれていてそれが涙ぐましい。
でもね、ちまたのおっさんたちもそうやって生きていると思うのです。社会を牛耳ってるおっさんなんてこの世の中に一握りしかいない。大抵のおっさんは必死に生きていて、馬鹿にされないようになんとか踏ん張って生きていると思うのです。

世代間闘争なんかを持ちだして世の中の不具合を全ておっさんになすりつけるようなことを言う人は本作を観て「おっさんも色々大変なんだな」ということを分かって欲しい。頑張ってるから。