セミオーシス/スー・バーク 著

環境破壊と戦争で荒廃した地球を十数人の人々は後にして宇宙に旅立ち、158年の冷凍睡眠を経て地球型惑星に辿り着いた。しかしそこには知性を持つ植物が住んでいた。 

セミオーシス (ハヤカワ文庫SF)

セミオーシス (ハヤカワ文庫SF)

 

 面白かった。読んでる間ずっと「次はどうなるのか」と楽しみになる物語だった。

地球人が惑星に辿り着いてから100年と少しの間を7世代の目を通して語るという形式で、惑星パックスは植物と小動物の世界だが、その中の竹に似た植物は高度な知性を持っている。当初はその<竹>と共存するのかどうかというところから物語が始まり、警戒すべきか協力して暮らしていくのかとどきどきしながらページをめくることになる。
物語が進むと、人類は<竹>と共存しお互いに持ちつ持たれつの関係となるように見えるが、果たして素直にそう信じていいものかという疑念も残りつつ物語は進み、そしてまた新たな事件が起こる。

異性に辿り着いた人類が知的生命体と出会うというファーストコンタクトもののSFでありながら、地球で培われた文明が失われ金属器さえも創り出せない文明になった人類が生き残るために行動するというロストテクノロジーものでもあり、サバイバルものでもある。そして、登場する少年少女の成長譚でもあり、彼等の社会における成長と混乱を描くお話でもあり、面白い要素が色々に散りばめられている。
その中でも一番のテーマは、対立か共生かというもので、<竹>や他の動植物と共存して生きて行くのか、はたまた彼等と主従関係を築いていくのか、それとも排除するのか、そういうことが描かれている。

SFというのは荒唐無稽な物語のようで、その設定は確かに夢想であるだろうけれど、そこで描かれるのは人間の行動なのでテクノロジーが発展した社会でも逆に失われた世界でも現代の物事と社会を映し出して描くことができる。
知的植物との共生、なんていうのは荒唐無稽な設定だが、それを外国人に置き換えるだけで本書で描かれている事柄が現実の移民問題と共通のものとして浮かび上がってくる。

ラストがどうなるのかはネタバレになるから書けないが、この小説の著者は女性ではないのかと思ったが、検索してみると確かにそうだった。そう思うと随所に女性的な面が表れているようにも思える。