学校で教えてくれない音楽/大友良英 著

学校の音楽の授業では習うことのない音楽、そして音楽の楽しみとは何かについて 

学校で教えてくれない音楽 (岩波新書)
 

 

大友良英さんは子供やプロではない人たちとの合奏という形式の音楽会をやっておられて、本書は、そのようなイベントでの様子や対談が記録された本です。こんな感じ。

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大友良英というとNHKの朝ドラで能年玲奈が主演していた「あまちゃん」の音楽を担当していたことが有名ではないでしょうか。自分としては、フリージャズを出自とした人で、即興音楽やノイズの領域で活躍している方という認識です。KBS京都で金曜深夜に放送されているラジオもよく聴いています。

そんな大友さんが音楽をどう捉えているのかが垣間見える内容でした。例えば

世界には、それこそ言葉の数ほどの色んな音楽があって、「ドレミファ」というのは、そのなかの一つでしかない。もちろん非常に強力な、もっとも普及した音階ではあるけれど、例えていうなら英語が世界中で話されているってのと同じように「ドレミファ」が普及しているだけで、世の中には、日本語もベトナム語もあるように、いろんな音楽が存在します。まずは、そのことを頭のどこかで意識しながら、話をすすめましょう

という風に西洋式の音楽の語法が普及してはいるけれど音楽というのはそれだけではないと仰っています。また

音楽好きというのは、自分のアイデンティティと自分が聴く音楽とを重ねて考えているっていうことです。僕らが十代の頃は、それをある「ジャンルの音楽を聴く」ということで示せたんだと思います。

とも語っています。

珠に、ある音楽を好んでいるが故に、その他の音楽のジャンルを「くだらない」と一蹴する人がいます。十代、二十代の頃にはそのような年上の人とよく遭遇しました。曰く「ロックなんか聴かないでフォークを聴け」とか「ジャズを聴け」とか。そういう年上の人にはなりたくないと思っていて、反発があったせいでジャズを聴かずに過ごしてしまったことを少し後悔しているのですが、大友良英さんのような開けた考え方の人が身近にいたらジャズが好きになれただろうにと思います。そして未だに「ノイズなんてどこがいいのか」みたいなことも言われなくて済んでいると思います。

学校で習う、正確に歌い演奏することを目指す音楽とは違い、音を発するだけで楽しいこと、そしてそれを他人と共有しながら合奏することで喜びがあることを確認することで、音楽で得られる楽しみの本質は何か、みたいなことを考えさせられました。