アル中病棟/吾妻ひでお

アルコール中毒になり入院した経験をもつ著者が病棟での生活を記録する実録漫画。 

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

 

 実録漫画とは言いつつも吾妻ひでおさんのまるっこい絵柄で描かれる漫画には暗いどろどろしたところはないです。病棟にいる色んな患者の奇妙な行動が描写されギャグ漫画として成立しているので面白く読める。実際はアル中なんて悲惨この上ないことだろうけどそこは作者の腕前なのでしょう。

ちょっと前にはてなでパチンコ中毒で身を持ち崩して生活保護に至ってしまった人の記事があって、それに対してパチンカスだとか、パチンカスなんて言葉を使って差別するな、みたいな話題があった。大方はパチンコで借金をこさえて生活が破綻するなんて迷惑極まりないといった意見のように見えた。
確かにその通りではあるけれど、ギャンブル依存、アルコール依存というものにそれほど厳しい目を向けることができない。なんだかそうなってしまう人の弱さの方に共感してしまって。それは自分が弱い人間だから自分を肯定する為にも弱い人間を肯定しようという気持ちなのかも知れない。あまり強い人に憧れないから。成功した経営者の独白のようなビジネス書とか読みたくないし。でもあれはギャンブルに勝った人間の物言いでしょう?万馬券を当てた人間の語る競馬必勝の法則とどれだけ違うというの?会社経営なんて知力と努力も必要だろうけど時勢や運に恵まれたことも大きいいのではないだろうか。それと周りの人間、社員。それを全部自分の手柄みたいに言うの大袈裟だと思うのだけど。あーいう偉いさんの説く修身とか説教とか嫌いだし。
中島らもみたいに自身のアル中経験を文学に昇華させてしまう人の方がよっぽど好きだわ。弱さと知性を兼ね揃えてる人の方が好きだ。ただ強いだけのおっさんは嫌い。

吾妻ひでおの『アル中病棟』も自身の弱さとアル中に陥ってしまう人々の弱さがその滑稽な行動の裏にあることが読み取れてとても愛らしい漫画です。身内にいたらかなわん人やなと思うんだろうけど。