ワイルド・スピード

2000年、米国、ロブ・コーエン監督作

www.youtube.com記念すべき『ワイルド・スピード』シリーズの第一作目となる作品。

劇中で、ポール・ウォーカー(ブライアン)が廃車をヴィン・ディーゼル(トレット)の整備工場に持ち込み、そこで働くメカニックのジェシーが、車の改造を解説するシーンがある。ジェシーの知識にポールは感心して「お前はMITに入れる」と言うが、彼は、代数と幾何は成績が良かったが注意力が欠如していて登校拒否になり学校をドロップアウトしたと語る。

これをどう見るだろうか。

ジェシー発達障害と言われる人を描いているのだと思う。一芸に秀でているが、世間や社会には馴染めない人間として登場している。そういう人間を描いている奥深さをこの映画から感じて欲しい。

この映画はカーアクションと派手な銃撃戦による単純な娯楽作のように見える。そう思うのも無理はないし、そう読みとっても何も問題はない。
もちろん車への愛が充ち満ちている。シビックが、シルビアが、RX-7が爆走する。その快挙に拍手を送る、それでも充分に楽しめる。

しかし、この映画で描かれるアメリカではアメ車よりも日本車のストリートカーが安く手に入り、金のない若者には人気があったという背景も心得ておいて欲しい。それは貧者の武器とも言えるものだったのだということを。

主人公のポール・ウォーカーにしても平の警官からおとり捜査に志願することで「刑事になりたいんだろ?」と言われる。低層にいる身分の人間だ。

これはアメリカの庶民を描いた映画なのだと思う。小奇麗な上流階級のロマンスではなく地べたで生きる人のあがきを描いた映画だと思う。HONDAの高級車NSXトヨタがぶっちぎる場面にそれは象徴されていると思う。

最高のアメリカ映画です。