ビニール傘/岸政彦 著

新潮9月号を読みました。

新潮 2016年 09 月号

新潮 2016年 09 月号

 

 岸政彦さんの『ビニール傘』という短編が掲載されていました。冒頭だけ読めるみたいなので読んでみて欲しいです。

新潮 立ち読み:2016年9月号 | 新潮社

少しでも気持ちが動いたのなら本編を読んで欲しいです。立ち読みでもいいから読んで欲しい。買って読むべきだとは思います。一応言っておきます。

そこには、市井の人間の生き様が描かれています。小洒落た職業でもなく小奇麗な人間でもなく、社会で蠢いている人間が描かれています。舞台は大阪だけど、それは関係ないでしょう。日本全国に共通する物語だと思うので。当方としてはその土地勘と共に情感深く読みましたけれど。でも大阪が舞台だからという代物ではないと思います。社会の底辺の人間の生き様、なんてことは申しません。だってこれが普通でしょ?これが普通じゃない?底辺だという感覚の方がおかしいんですよ。みんなこんな感じです。こんな風に安物に囲まれて小銭に四苦八苦してるんじゃないんですか?そう思わないのなら、あなたは社会の上辺の何%なんでしょう。底辺の人々の暮らしを動物の生態を観察するムービーのように眺めるのでしょう。でも俺にとってはこれがリアルです。現実です。読んで欲しいです。文学と言わず小説全般は今を描かないと駄目だと思ってるんです。映画でもテレビドラマでもそうだと思うんです。今を描かないと現代に生きている意味はないと思うんです。普遍的なものってありますよ。それは認める。千年前から変わらない人間の情動ってのはあると思う。でも今、何かを描くのなら、今を描かないと。でも、テレビも映画も今を描いてます?テレビドラマの主人公の職業ってなんですか?非正規で働いてる人間が主人公ってあります?今を描けてます?今、現代を描いてないものなんて何年もたって残らないですよ。ただのその場凌ぎのエンタメでしかない。今を描かないと。現代を描かないと。今、この瞬間、この時代を描かないと時代の記録としてさえ残らないですよ。今を生きてる意味はないですよ。

 

岸政彦さんの『ビニール傘』には、「今」、「現代」があると思います。是非読んで欲しいです。

 

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