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「憲法改正」の真実/樋口陽一、小林節 著

護憲派の樋口氏、改憲派の小林氏、二人の法学者の対談による自民党憲法改正草案の分析とその危険性を解読する本。

「憲法改正」の真実 (集英社新書)
 

 『日本会議の研究』を読んで、その後に『「憲法改正」の真実』を読むと面白いよ、というツイートを見掛けたので読んでみました。

元々、安保法案成立の過程で、権力者が自分たちの都合のよいように法を読み解くことに疑問を持っていた、というか怒りを持っていたので、立憲主義の破壊というその点についてはすんなり入ることができました。安保法案に賛成の人はそこで引っ掛かるか読むのを止めてしまうでしょう。というかこういう本を手にとったりしないか。

改憲草案には家族条項というものがあってそれは憲法24条に

家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。
家族は、互いに助け合わなければならない。

という一文を付け加えるものです。これを読んだだけなら素直に「いいことやん」と思ってしまいそうですが、法学者のお二人によると


樋口「家族を尊重せよ」というのは道徳でしょう?憲法に道徳を持ちこむことの危険性は、いろいろな角度で指摘できると思います。一種の思想統制の根拠となっていく可能性もあ

小林「そのとおり。法と道徳を混同するな、というのは近代法の大原則ですよ」

と述べておられます。そのあと教育勅語を例としてあげて批判されています。というか親兄弟と仲良くしようが喧嘩しようが、そんなことまで言われる筋合いはないですわな。

他にも立憲主義、九条や緊急事態条項、憲法制定権力についてなど勉強になる話が多かったです。
先生方が訴えておられるのは先ず立憲主義が破壊されているということですが、それと共に、この改正案ではこういう風に権力に悪用される可能性があるということを訴えておられます。危険になる可能性を孕むものは憲法改正として適正でないということなんですが、憲法の改正案の条文を読んだり自民党の解説を読んだりする限りでは「いいことやん」という感想になってしまう。で、こういう本を読んだり先生方のお話に耳を傾けると危険性を知ることになる。

左翼になるにはマルクス、レーニンその他勉強しなければならないけれど、右翼になるには愛国心さえあれば良い、なんて言われますが、この問題は大きいと思います。
良いことのように見えるということと、よく考えるとその構造には権力者に悪用される可能性がある、ということでは難易度が随分違うんですよね。この点をどう克服していきながら、これらの主張を広げていくか、とても難しい問題だと思います。

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そしてグッドタイミングでこんな催しがあったので行ってきました。

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小林節先生の講演会です。グッドタイミング過ぎるタイミングでした。
お話は『憲法改正の真実』と重なるものも多かったのですが、国際法と交戦権の話など興味深い話もあり、何よりとてもユーモラスな語り口でお話されていて笑いがそこここで起きるような楽しいと言えるお話でした。
テレビ出演のオファーがぱたりと無くなったなんて話は考えさせられることです。桜井よしこさんと私の話を両方取り上げるのが公平というものだというお話でこれも笑いを誘っておられましたけど。
こういう講演活動も少しでも関心を持って考えて欲しいという活動なのでしょう。

本書の中で、樋口先生は国民には知る権利があると同時に知る義務もあると仰っておられました。その通りだと思います。

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