叛逆航路/アン・レッキー 著

“ブレクは宇宙戦艦のAIであり、その人格を4000人の肉体に転写して共有する生体兵器「属体」を操る存在だった。だが最後の任務で裏切りに遇い、艦も大切な人も失ってしまう。ただ一人の属体となって生き延びたブレクは復讐を誓う。”

叛逆航路 (創元SF文庫)

叛逆航路 (創元SF文庫)

 

 死んだ兵士を蘇らせ、その意識を宇宙戦艦のAIと共有して兵士として活用するというものが、属体と呼ばれる設定です。なのでAIは4000体の個体と意識を共有している。この設定を聞いただけでワクワクしますよね。
そして、ある謀反によってAIの本体である戦艦は破壊されて4000体の1体である属体が生き残り、その復讐を果たすという物語。もうこの設定だけで傑作の雰囲気がするのです。
が、読んでみるとちょっと退屈。スターウォーズに出てくるような銀河帝国的な世界で、そこには皇帝がいて、その皇帝も何体もいて意識を共有しているという設定など面白くなる要素はバリバリにあるものの、そこで描かれるのは貴族的な軍人たちの家柄の話やなんやで活劇ではないのです。復讐譚と聞けば活劇だと思ってしまうよね。

AIは男女の性別を認識できないという設定もあり、作中では全ての三人称が「彼女」で語られます。なぜこういうことをするのかはよく分からない。登場人物が男なのか女なのかがよく分からないまま物語は進みます。
これについては文学的な意味は分からないけれど、宝塚的なものを感じるのですよね。貴族の麗人的士官たちの駆け引きみたいなお話が尚更、女性又は男装した女性が演じているという風にも思える。BL的要素も感じるし。作者のアン・レッキーは女性だからそういう趣味なんじゃないでしょうか。あまりにも浅い考察かな。
それとも進化した人類は雄がいなくても繁殖できる世界になっているみたいな裏設定があるのでしょうか。これはこれで深読みが過ぎるでしょうか。

終盤になって活劇っぽくなってちょっと面白くなるんだけど、半分以上は退屈で途中で放り出そうかと思った。3部作の第1部らしいんだけど続きはどうしようかなーという感じです。