草原の実験

2014年、ロシア、アレクサンドル・コット監督作
中央アジアと思しき草原のただ中に建つ家、父親と美しい娘が住んでいる。父親は毎日トラックに乗って仕事に出かけ、少女は家で待っている。幼馴染の青年が馬に乗ってやってくるが他に近隣の住民もいない。ある日近くで車が故障したことが切っ掛けで白人の青年がやってくる。白人の青年と幼馴染の青年は少女に想いを寄せている。

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詩のような映画でした。台詞が全くなく、登場人物の演技だけで物語は進行していきます。草原と家だけが舞台なので映っているものはそれだけなのですが、とにかく画面が終始美しいです。
その美しさの一端を担うのは主演のエレーナ・アン。ロシアと韓国のハーフの女優さんらしいですが、その神秘的な表情が本作の詩情に大きく貢献していると思います。

オチというか急転直下のラストで、観終わった直後は唐突な展開だなと思えました。よく考えると「そういうことを描いてたんですね」という感じです。

観ている間、この映画はどこへ向かうのだろうと思いながら観ていました。私たちが見慣れた映画は物語の序盤から中盤で主人公の目標は提示されて、そこへどうやって向かうか、その成否はということがカタルシスになっていくわけだけれど、本作は物語の中に伏線はあるもののどこへ向かうかがはっきりとは明示されなかったので、唐突なラストという印象になったのだと思います。

でも、それは良い悪いじゃないんですよね。ハリウッド映画的に分かり易いものだけが正解ではないのだし。
去年観た『神々のたそがれ』もそのような分かり易い映画の文法に沿わない映画で、観た直後は「なんだこれは?」みたいな感想だったけれど、映画の場面は強烈に焼き付いているんですよね。この「強烈」さが映画の良し悪しなんじゃないかなと思います。
『神々のたそがれ』も本作もロシア映画。ロシア映画恐るべしです。