極私的2015ベスト

12月も半ばを過ぎたのでよくある今年のベストを

○映画
マッドマックス 怒りのデスロード』

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マッドマックス2』で20世紀の映画界に近未来荒廃無法終末SFカーアクション映画の金字塔を打ち立てたジョージ・ミラーが、21世になって自己ベストを更新したという有り得ない展開。何もかも素晴らし過ぎるのです。

映画というのは2時間程の時間の中で人間の行動を描くわけだけれど、それは端的に言えば「○○してるだけ」なのです。犯人を追っているだけとか、異性に惹かれているだけとか、戦争をしてるだけとか、本作で言えば「逃げてるだけ」なのです。が、その行動の基になっている過去や背景、その行動の先にある未来を想起させることが奥深さにつながると思うのです。
公開直後に様々なblogで色んな評がなされたのも、逃走劇という単純な物語以上に緻密な設定や登場人物の過去を想像させる映画の構造があったからだと思います。
ちらっとだけ写る水耕栽培の場面や煙たなびくガスタウン、MAXの脳裏に蘇るフラッシュバック、フュリオサの「Remenber me」という台詞。それらに細かい説明はないけれど、背景や過去があることを表している。そして全てが映像で語られるという映画のお手本なのです。

 

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『CHAPPiE』

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ロボットを通して生への渇望を描くという傑作でした。手塚治虫の『火の鳥』に出てくるロボット、ロビタを思い出したのですが『ブレードランナー』もレプリカントという人造人間を用いて生きるという欲望をえがいたものですよね。よく出来たSFというのは、やはり滋味深いです。


○読書
『中国の大盗賊・完全版』

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中国の皇帝や、果ては毛沢東までが盗賊団の首領が成りあがったものだという、中国歴史ものです。内容が面白いのもさることながら、その語り口が軽妙なのです。著者の反骨心みたいなものが窺えてスラスラと読んで、知らない内にのめりこんでいくという、とても面白い本でした。

 

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『最貧困女子』

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「人並み」の生活にさえ辿りつけない、そしてそこから脱出も出来ない女性達を描いたルポ。世の中にある暗部や底辺なんて見たくないし聞きたくないという向きもあろうかと思うのだけれど、今自分達が生きている社会が綺麗なものや整ったものばかりで出来ているわけではないのだからちゃんと直視するべきだと思います。


○音楽
『Asian Meeting Festival 2015』

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京都で催されたライブ。大友良英を中心にベトナム、マレーシア、タイ、シンガポールインドネシア、日本というアジアの雑音、実験、即興音楽家達による共演です。

先ず音が凄かった。その音による異空間の体験は今も体の芯に残っていて素晴らしい音響体験でした。言葉では説明出来ないのでビデオを見て貰えればと思います。

Asian Meeting Festival 2015 02 08 short ver. - YouTube
それと、アジアの決してポピュラーとは云えないジャンルの音楽家たちを、こんな風に日本に招聘して演奏を聴かせてくれるということにとても意義を感じました。
大東亜共栄圏」という言葉があるけれども、その政治的、歴史的背景を全て取り払って、言葉の意味だけを捉えると、東アジアが共に栄えるというのはとても意義深いことだと思うのです。このライブでは音楽によって東亜の共栄が成し遂げられていたと思います。
この後もインドネシアのフェスティバルで出演者達が再集結して演奏をしていたりして、繋がりが形成されていっているのを感じます。自分もアジアのロックやポップスに目が向くようになりました。2016年2月の次回開催が楽しみです。

 

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『FROM THE AGES』

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米国、サンディエゴサイケデリックロックバンドEARTHLESSのアルバム。
兎に角凄いんです。問答無用に凄いのです。ロックのエモーショナルな良いところだけが繋がってるような曲が延々続くという衝撃作。
ロックンロールにおけるテクニックなんてのは、その評価の二の次だと思ってるのですが、このバンドはテクニック的にも凄いです。

おまけ
○スポーツ
ラグビーワールドカップ 南アフリカVS日本』

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もう何回も見て、その度に泣いてしまいます。20数年に渡ってワールドカップでは1勝しかしていない、弱小と思われていた日本が、世界の強豪である南アフ リカと互角に渡り合ったというだけでも凄いのに、勝ってしまうという有り得ない展開でした。今まで日本代表が交流戦なども含め、海外勢に歯が立たなかった のを見てきただけに感動はひとしおです。
後半残り時間僅かというところでペナルティを得て、キックで同点にすることも出来たのに敢えてトライを狙いに行くという選択をしたというところで、その無謀ともいえる勇気にどうしても泣けてしまうんですよね。


映画を劇場に観に行ったのは11本。これでは映画好きとは言えないかもです。それでも『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』『野火』『セッション』『アメリカン・スナイパー』など面白い映画を観ることが出来ました。『神々のたそがれ』がボディーブローのようにじわじわきています。

音楽はカセットリリースの作品を多く目にしたことが印象的でした。ただ、CD、レコードを買う枚数も音楽の為に使う時間も以前に比べると随分少なくなってしまいました。耳を悪くしたのが痛いです。

読書は・・・乱読だなぁ。