Psychetronics Erectile/MASONNA

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Mademoiselle Anne Sanglante Ou Notre Nymphomanie Auréolé* - Psychetronics Erectile (Vinyl) at Discogs

今後どれほど心揺さぶる盤に出会ったとしても人生の名盤を選べと言われたら必ずベスト5に入る極私的大名盤。日本のノイズミュージックの名作は数あれど自分にとってノイズの聖典はこの一枚です。

大友良英さんが題名のない音楽会に出演された時にノイズ・ミュージックを「ジミヘンのギターのギャーンと鳴っているところが続いている音楽」と紹介しておられましたが、本作はシャウトとストップ&ゴー、歪みやうねりといったロックンロールのエッセンスが凝縮している音楽です。ハーシュ・ノイズがうねりまくり、叫びと喚き声が散りばめられていて、旋律からもリズムからも自由であり音そのものの威力だけで構成されています。
魂の叫びなんて言葉があるけれど、その叫びは「愛がどうした」とか「恋心がどうだ」とかそんなんじゃないと思う。「うぎゃー」とか「ぐぅわー」とかだと思う。本作には魂の叫びが密封されています。

ラウドロックの進化をパンクの文脈で辿ると
ロックンロール→パンク→ハードコア→グラインドコア
となると思うのですが、グラインドコアの先にあるのがマゾンナだと言って間違いないです。グラインドコアの代表的バンド、ナパーム・デスの名曲「You Suffer」とマゾンナの音は完全に繋がっています。
グラインドコアがロックバンドフォーマットでの最終形を見せつけたのに比して、ロックンロールを煮詰めて粉砕して擂り潰して濃縮して抽出してぶちまけたものが本作であると言えます。ロックンロールの評価は歌や演奏の技巧ではなく、その放出するエネルギーの大きさであり、本作はそのことを知らしめています。ノイズの名盤であると共にロックの最終形を見せつけたロックンロールの名盤でもあります。