小津ごのみ/中野翠 著

小津安二郎監督作についてのエッセイ

小津ごのみ

小津ごのみ

 

 小津作品は好きなのだけれど、なぜ好きなのか、どこら辺が好ましいと思えるのか自分でもよくわからずにいて、そういうのが少しでも分かればと思って読んでみました。

納得したのは、室内の調度品、衣装(着物の柄)、襖の柄などが監督の好みにあつらえてあって、非常に細かく気を使って作り上げられているということ。映画を観ている時には気付かなかったけれど、そういうものの積み重ねが心地よい印象を作り上げているのだということが分かりました。

それと、室内を撮る時の独特のアングルも

“カット毎にあっちこっちからライトを運ぶので、二、三カットやるうちに床の上は電気のコードだらけになってしまう。一々片付けて次のカットに移るのでは時間もかかるし、やっ介なので、床の写らないように、カメラを上向きにした。『小津安二郎戦後語録集成』”

という必然があったと共に、構図としてグラフィカルな美しさを目指しているということが分かって、それが良い印象に繋がっているというのも分かって大いに納得しました。

映画に関する本は、データや知識を知ることができるという面もあるけれど、自分の気付かなかったことを気付かせてくれるという要素があると面白い。小津作品は観てないものも多いけれど、楽しく読めました。

 

対して、自分も映画の感想文など小文とは云えblogに書いているわけで、何かしらの気付きというものが書けているのかと思うと、どうなんだろう。他所の映画評のblogなど読んで、観ていない作品でも「これ観てみたい」と思うこともあるわけで、そこには何かしら興味を惹くことがらが書かれているわけで、自分の感想文はそんなことが書けているのか、とちょっと自省的になったりもしたのでした。