半眼訥訥/高村薫 著

小説家、高村薫の時評集

半眼訥訥 (文春文庫)

半眼訥訥 (文春文庫)

 

 90年代に書かれた時評、世評であるので少しばかりの古さを感じるのは致し方ない。ただその視点と文章は読み応えがあると思う。特に文章の方はとても硬質。語彙がそう感じさせるのかも知れないが、おどけたりするところが一切ない文章で深刻に世評を憂いている。筆者の名前を知らなければ女性が書いたものとは思えないのではないかという文章もある。その語り口はとても重厚だと思う。

書籍であるので書かれた文章ではあるけれどそこには語り口という話し言葉の感触がある。筆者が思っていること考えていることを文章に表しているものなので、当たり前なのだけれど、その語り口には筆者の人格というものが滲みだしている。このような文章を技巧として書けるものなのだろうかと思うと共に、技巧としてこのような硬質な文章になっているのではなく、人格の表れとしてこのような文章になっているのだろうなと思う。

blogにこうやって小文を書いていて、文章を書く力をちゃんと身につけたいと常々思っているけれど、文章の技巧というものは学んで身につけることは出来ても、総合的な文章力というものは鍛えることは難しくて、人格や性格を鍛えることによって、それが文章や語り口に反映されるということなのではないのかな、と思ったのでした。