野火

2015年、日本、塚本晋也監督作。京都シネマにて観賞。
太平洋戦争のフィリピン戦線において生き延びようとする日本兵の物語。原作は大岡昇平の同名小説。

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えげつないものを観てしまった。良い意味で。
飢え、孤独、苦痛、恐怖、あらゆる負の感情と無慈悲で残酷な状況が詰まっている。悲惨極まりない映像が続く。そしてジャングルの緑だけが美しい。その緑さえも圧倒的で、恐ろしさを匂わせる。
独りの兵士の物語ではあるが、武勇というものは全く描かれない。戦争映画は戦場で戦う兵士を描けば英雄の話となってしまうが、本作はそのような英雄譚であることを徹底的に拒んでいる。そもそも敵と交戦することさえ殆どない。自分達(日本軍)が自ら作った、苦しみを味わうシステムに苦しめられているような感があって、その苦しみをこれでもかと描ききっている。とにかく救いようがなく惨めで残酷。
全く楽しい映画ではない。負の感情しか受け取らない。が、映画の評価というものは、その映画の放つエネルギーの大きさで測られるものだと思う。日本映画における戦争映画というカテゴリーの中でも評価されるべき映画ではないでしょうか。

音響と音楽の存在感が凄い。ガムランのような音楽で不安と恐怖を煽っていて、この映画の迫力の大きな力になっている。音楽は石川忠。メタルパーカッションで活躍されている方のようですが、存じ上げませんでした。今後注目したいと思います。
関東では爆音上映というのがあったみたい。さぞかし凄かったでしょうね。

塚本晋也×野火

塚本晋也×野火