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人造人間横山やすし

売れない漫才師、立山ひろしは途方に暮れていた。相方のたかしとコンビ別れしてしまったのである。たかしはオカルトに詳しい男で超常現象や疑似科学などを笑い飛ばすネタは売れるところまではいかなかったものの一部では評判が良かったのに、ミイラ取りがミイラになるという言葉通りに新興宗教に入れ上げてしまってそちらに専念したいと言い出したのだった。

ひろしはネタ作りは相方に任せきりだったのでピン芸人になってどうしたものかと思い、何かネタはないかと街を彷徨い歩いたが、面白い話や出来事がそうそう転がっているはずもない。そんな折にインターネットオークションで横山やすしの遺品と銘打った眼鏡が出品されていた。騙されるのも何かのネタになるかと思いその眼鏡を落札した。

手元に届いた眼鏡は横山やすしのものかどうか判別がつくはずもない。ネタになりそうもないと思ったが、その眼鏡に一本の髪の毛が絡み付いていた。そこで思いだしたのは元相方が語っていた黒魔術の秘術だった。人間の一部分があればそれをある条件で培養すると元の人間そっくりの生きた人形が生まれるというもので、それに必要な材料を現代において調達するにはどうすればよいかという話をしたのを思い出したのだった。ひろしはこれまた何かのネタになると思いホムンクルスを生み出してみることにした。うまくいくはずはないが、横山やすしの人造人間を作り出そうとしたという話はネタになりそうな気がした。

元相方に黒魔術関連本を借り、そこに示されている通り浴槽に聖水と各種材料を加えてヒーターを仕込み温度を一定に保って例の髪の毛を沈めておいておいた。そうすると驚くことに一週間もたつと髪の毛は膨らみ小さな人型になってきた。ひろしは面白くなりその後もせっせと培養液に栄養を点滴し人造人間誕生を待った。

四十日後、ついに人造人間が誕生した。浴槽から起き上がったその姿は横山やすしそのものだった。ひろしは横山やすし今宮戎漫才コンクールに出場することを決意した。

漫才コンクールは散々な出来だった。いくら天才の複製だとはいえ生まれて一週間では漫才どころではない。しかしひろしは微かながら手応えを感じていた。複製とはいえ昭和の天才漫才師の実力をひしひしと感じていた。そこで、ひろしは年末に行われる日本一の漫才師を決めるトーナメントに出場することを考えた。ネタを作り練習すれば必ずや良い成果が得られるという確信があった。

そのころ西川きよしは疑念を抱いていた。今宮戎漫才コンクールに審査員として参加していたきよしはある男が若い時の彼の相方にそっくりだったのに気付いた。きよしは再びやすしきよしを結成することをもくろみ、彼を奪還することを画策した。

元相方の立山たかしもひろしの行動を不審に感じていた。ひろしの身辺を調べ上げホムンクルスの誕生に成功したことを知り、教団を挙げて人造人間の奪還を計画した。

西川きよし一派、謎の教団から狙われながらも立山ひろしと人造人間横山やすしの漫才コンビは漫才大会の予選に向かうのだった。