CHAPPiE

ニール・ブロムカンプ監督作、米国、2015年
ロボット警官が採用されている近未来、ロボットと開発者はギャングの一味に囚われてしまうが、開発者は意識を持ったロボットを造り出すことに成功する。ギャングの一味と行動を共にすることで影響を受けるロボットは・・・

超絶的傑作でした。泣いてしまいました。
ブ ロムカンプ作品はSF娯楽映画でありながら、現代の社会問題を描くという作風ですが、今作は現代の問題というより普遍的な人間の死生観を描いた作品でし た。その生への渇望を演じるのはロボットだというのが皮肉と云えば皮肉。ギャングたちはバタバタ死ぬのに主人公のロボットは知性が備わった故に死にたくな い生き延びたいと生きることへの執着を見せます。終盤にかけてこの主題にまつわるサスペンスがハラハラさせるのと、その切実な生への欲求が堪らなく切ない です。

どの登場人物も完全な正義や悪ではないのも特徴でした。ロボット開発者は基本善人だけど自分の技術的成果を試したくて規則を破る し、ギャング達は基本悪だけど生きる為の悪事だったり、女性のギャングはロボットに対して母性をみせたりと憎めない部分もある。兵器ロボットの開発者はい けすかない奴だけど、落ち目のプロジェクトを挽回しようとする動機には一抹の同情も感じる。勧善懲悪でないところがリアルで素晴らしいと思います。
他にも、ギャング一味に教育されて悪く育っていくロボットを開発者が諭す場面は、グレた子供と親を思わせるし、警官だと思われて主人公のロボットがチンピラに乱暴される場面は外見による差別を連想させます。色んな要素が散りばめられています。

娯楽アクションとしても素晴らしいです。ロボットは本当に実用化されているのではないかと思えるほどリアルだし、アクションシーンも破壊衝動全開です。ブロムカンプ作はこういうとこに手を抜かないから素敵ですね。

監督の知らないところでシーンがカットされているというのが話題ですが、そんなの気にしないで見て欲しいです。映画の中で簡単に人が死んだりそれで涙を誘うようなものも多い中、生きるという欲望を人工知能を通して描いて、それが胸に迫るという超傑作でした。

あともうひとつ、ブロムカンプはGTR好きなんですかね。エリジウムにも出てたよね。