古都/川端康成 著

呉服問屋の一人娘、千重子は赤ん坊の頃に拾われた子だった。祇園祭の夜、偶然、双子の妹と再会する。

古都 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)

 

 軟らかい文章のものばかり読んでいたので、ちょっと名作を。川端康成なら美しい文章のお手本ではないかと思いながら読んでみた。
昭和36年発表だから1960年代の前半の京都のお話。京都という街、自然、寺社仏閣、その祭事の美しが丹念に描かれている。登場人物も容姿と共にその心性も美しい。
綺 麗な物事を流麗に形容して文章に表すことが美文なのかと思うがそれだけではないような気がする。美しいものをその通りに表現する術がなければそのイメージ も伝わらないわけで、その『術』こそが美文なのだろうとも思う。読んでる間はさらさら、すらすらと読んでしまうので、それこそが美文なのでしょうかね。簡 単に分かれば苦労しないって話ですが。

あと、登場人物の会話、口調が今とは随分違っていて、50年経つと口語や方言というものも随分変わるんだなというのも発見。

作品は静かで、少し退廃的で、余韻の残る小説でした。