読書

人生は驚きに充ちている/中原昌也 著

小説、対談、ルポ、日記、エッセイと色んなジャンルの中原昌也の仕事集。 人生は驚きに充ちている 作者:中原昌也 新潮社 Amazon こんな本ってあまりないのではないだろうか。中原昌也と言えばノイズ・ミュージシャンだけど、小説家としても既に色んな賞を受…

民族とネイション/塩川伸明 著

エスニシティ、民族、ネイション、ナショナリズム、これらの言葉が含む意味は一様でないということを世界の様々な例を取り上げて解説する本。 民族とネイション: ナショナリズムという難問 (岩波新書) 作者:塩川 伸明 岩波書店 Amazon ひとつの国に多数の民…

社会学はどこから来てどこへ行くのか/岸政彦、北田暁大、筒井淳也、稲葉振一郎 著

社会学に関する社会学者たちの対談集。 社会学はどこから来てどこへ行くのか 作者:岸 政彦,北田 暁大,筒井 淳也,稲葉 振一郎 有斐閣 Amazon 社会学者の誰が何を言ったのか知らないが炎上していた模様で、その際に社会学者と社会学を貶めるようなことを言う人…

変!!/中島らも 著

80年代末に漫画誌に連載された中島らもの面白コラム。 変!! (集英社文庫) 作者:中島らも 集英社 Amazon 中島らもが、身の回りや世の中の変な物や者を取り上げて、それを面白可笑しく料理してしまうというコラム。1989年刊行なのでもう随分昔のものに…

アメリカン・ブッダ/柴田勝家 著

未曾有の災害と暴動により大混乱に陥り、国民の多くが現実世界を見放したアメリカ大陸で、仏教を信じ続けたインディアンの青年が救済を語る描き下ろし表題作の他、全6篇のSF短編集。 アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA) 作者:柴田 勝家 早川書房 Amazon …

田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児/徳本栄一郎 著

戦前は共産党中央委員長。逮捕、転向を経て、戦後は右翼の黒幕に。アラブの石油利権で暗躍した国際的フィクサーは財界人、保守政治家、ヤクザ、学生運動家、王侯貴族のすべてを受け入れた。「法螺は吹くが嘘はつかない」などと嘯く、騒々しいが憎めない男の…

検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?/小野寺拓也、田野大輔 著

世界中で悪の見本とされるナチスだが、ドイツ国内の経済政策には成功したとか、失業率を改善した実績があるとか、少数ながらナチスは「良いこと」もしたという論者が後を絶たない。ドイツ史の専門家がそれらを検証するブックレット。 検証 ナチスは「良いこ…

新版 日本語の作文技術/本田勝一 著

新聞記者出身の著者が解説する分かりやすい文章を書くための作文術。 【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫) 作者:本多勝一 朝日新聞出版 Amazon 文章が上手いと言われなくてもよいけれど、分かり難いとは言われたくない。名文家を目指しているわけでもないが…

ヨシキ✕ホークのファッキン・ムービー・トーク/高橋ヨシキ、てらさわホーク 著

すべての映画は政治的だ!ディストピア化する世の中にファック・オフ!ガラパゴス化する邦画市場、終わらない80’sリバイバル、不毛なポリティカル・コレクトネス論争、世界を埋め尽くすディズニー帝国の覇権、ファンダムの肥大と映画批評の行方……今、映画に…

ブラックボックス/砂川文次 著

ロードバイクを駆りメッセンジャーの仕事をする男は、不安定なこの仕事をいつまで続ければいいのか悩んでいた。そんな時に同棲している女から妊娠したことを告げられる。何か他の仕事を、と思っている矢先に税務署員が滞納している税金の催促にやってきて、…

悲の器/高橋和巳 著

法学部の教授である初老の男は妻を亡くしていたが、若き令嬢と再婚する運びとなっていた。しかし、家政婦の女と関係を持っていたことから婚約不履行で訴えられ苦悩の日々が続く。 悲の器 (河出文庫) 作者:和巳, 高橋 河出書房新社 Amazon 著者の『邪宗門』が…

映画を早送りで観る人たち/稲田豊史 著

映画を早送りで観る人たちがいる。彼らは彼女らはどんな人なのか、なぜそうするのか、そうせざるを得ないのかを考察する内容。 映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書) 作者:稲田 豊史 光文社 Amazon 映…

ハリウッド映画の終焉/宇野維正 著

#MeToo運動とキャンセルカルチャーによる映画関係者の排斥、マーベルなどのヒーロー映画、そして配信で映画を観ることが普及したことによって映画界はどうなっていくのかという映画評論家の著者による考察。 ハリウッド映画の終焉 (集英社新書) 作者:宇野維…

文章読本/吉行淳之介 選・日本ペンクラブ 編

20名の作家による文章術の極意と心得 文章読本 (中公文庫, よ17-15) 中央公論新社 Amazon 谷崎潤一郎、井伏鱒二、川端康成、三島由紀夫、他、錚々たる文豪の書いた文章術が掲載されている。しかし良い文章を書く秘訣は分からなかった。もっと小手先のテク…

ジャパノイズ サーキュレーションの終焉/デヴィッド・ノヴァック 著

90年代に北米で注目され、独自の理想の音楽を実践する世界として「ジャパノイズ」と呼ばれるようになった、日本のアンダーグラウンド・ノイズ・ミュージック。ノイズの多様性に、そのありのままの創造性に迫る、日本の第一線で活躍するノイジシャンと興隆…

薬菜飯店/筒井康隆 著

神戸の路地裏にあった薬膳を出す中華飯店に入った男は驚愕の料理に出会うことになる。表題作含む6編の短編と俵万智の『サラダ記念日』のパロディ『カラダ記念日』を含む短編集。 薬菜飯店(新潮文庫) 作者:筒井 康隆 新潮社 Amazon なぜか久々に筒井康隆を…

無名仮名人名簿/向田邦子 著

向田邦子が出会ってきた人物や事物に関するエッセイ集。 古書店で購入しました。別に他意はないのです。向田さんはもうお亡くなりになっているから、新刊で買わなかったからといって怒ったりがっかりもなさらないだろうし。今、書店に並んでいる文庫本は「新…

自炊。何にしようか/高山なおみ 著

料理家、高山なおみさんの一人暮らしのための料理本。 自炊。何にしようか 作者:高山 なおみ 朝日新聞出版 Amazon 特別な料理のレシピは載っていないのです。餃子だったり焼きそばだったり焼き茄子だったり、そういう日々の食事のためのレシピ本。でも「あ、…

保守主義とは何か/宇野重規 著

保守主義の源流から、その変遷、そして本邦における保守主義を概説する書。 保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで (中公新書) 作者:宇野重規 中央公論新社 Amazon 先般『リベラルとは何か』という本を読んだ。そっちを読んだなら対立する側の言…

この世の喜びよ/井戸川射子 著

ショッピングモールの喪服売り場の店員として働く女が主人公。向かいのゲームセンターで働く若い店員やそこにいつもいる老人、フードコートにいつもいる中学生の女子と関わり合いながら主人公は昔のことを思い出したりする。 第168回芥川賞受賞作。 この…

嘘と正典/小川哲 著

後にカール・マルクスと共著で『共産党宣言』を著すフリードリヒ・エンゲルスは英国で工場暴動の首謀者として裁判を受けていて、決定的な証人が入廷しようとしていた。一方、冷戦時代のロシアでCIAの工作員はロシア人科学者と接触し国家的な重要機密を受け取…

リベラルとは何か/田中拓道 著

リベラルと呼ばれる思想がどこから来たのか、そして世界情勢と時代の変化によってどのように変遷して、現在は如何なる思想となっているのかを解説する本。 とても分かりやすく為になる本だった。 左翼という言葉があまりにも雑に使われているといつも思って…

空想の海/深緑野分 著

11の短編集。 空想の海 (角川書店単行本) 作者:深緑 野分 KADOKAWA Amazon 深緑野分さんという作家の著作は『スタッフロール』という小説を読んで大層感動したのだった。この作家の他の著作を読みたいと思ったし、そのまま読めばいいのだが、何しろ家に積…

侠拳/若野康玄 著

関西で右翼団体に所属し、山口組傘下の組幹部でもあり、空手家であり格闘技振興にも尽力した著者の知る関西における右翼と暴力団の関わりが綴られた本。副題は「関西右翼・ヤクザ関係秘史」 俠拳 関西右翼・ヤクザ関係秘史 作者:若野康玄 徳間書店 Amazon 何…

WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす/カール・ローズ著

現代では、大企業や富豪が社会運動に理解を示し、賛同の意思を広告媒体などを使って意思表示している。そして少なくない金額を寄付して資金的にも社会運動を援助している。このような大企業や富豪たちの行動をウォーク資本主義と呼び、その成立経緯と問題点…

エルヴィス ’68カムバック・スペシャル/前田絢子 著

1968年にクリスマス特番としてテレビ放送された『エルヴィス』。後に『’68 カムバック・スペシャル』と言われ、エルヴィス・プレスリー復活の契機となったこの番組の裏側を描く書籍。 エルヴィス、'68カムバック・スペシャル 作者:前田絢子 青土社 Ama…

街の人生/岸政彦 著

本書には5名のライフヒストリーが収録されています。子どものころに南米から日本に移住し、やがてゲイとしての自分に気づいた人。夜の世界でなんとか自分の生きる場所を切り開いてきた「ニューハーフ」。満州で生まれ、波瀾万丈の人生の果てに大阪でホームレ…

そしてミランダを殺す/ピーター・スワンソン 著

空港のバーで若く美しい女性と出会った実業家の男は、彼女とは二度と会うことはないだろうという思いから、妻が浮気をしていて殺してやりたいと思っていることを話してしまう。しかし女は意外にもその殺人に手を貸してもよいと提案する。『このミス2019…

宇宙へ/メアリ・ロビネット・コワル 著

第二次大戦が終わって間もない1952年、米国東海岸に巨大隕石が落下して多くの死傷者を生む。夫と共に生き延びた科学者エルマは、隕石落下の影響で地球が人類の生存に適さないほど環境が変化することを予測する。世界は協力して地球外へ脱出するべく人類…

テムズとともに/徳仁親王 著

今上天皇が1983年から85年まで英国のオックスフォード大学に留学していた時代を綴る英国留学記。 テムズとともに――英国の二年間 作者:徳仁親王 紀伊國屋書店 Amazon 本書は1993年に学習院教養新書として刊行された書籍の復刊で、学習院創立百五十…