『Who!』Selected by Parallax Records@外

 

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京都のライブハウス〈外〉で行われたノイズのライブ。主催は新京極のレコード店でノイズとか変な音楽がいっぱいあるパララックスレコード。
出演は、
Satou Makoto
毛利桂
GOVERMENT ALPHA
中田粥
K2
の5組。

色々と面白いライブだった。
トップバッターのSatou Makotoさんは木管楽器ファゴットを電子変調してノイズを発生させるという演奏だった。ファゴットなんて楽器を間近で見たのは初めてかも。
2人目毛利桂さんは、暗闇の中で音を鳴らし音に連動してLEDライトが明滅するという演出だった。とても深い貫禄のある音だったが、演奏後にどんな機材なのか見てみるとおもちゃのようなターンテーブル2台、ミキサーと幾つかのエフェクターしかテーブル上にはなく、これであんな音が出るのかという不思議さがあった。音的にも一番楽しめたかも。
GOVERMENT ALPHA、K2は期待通りのハーシュノイズでK2先生はモジュラーシンセを操っていた。
で、この日になんだか一番気になったのは中田粥さん。どんな演奏かというと

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こういう剥き出しの電子基板

 

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こんな風に積み上げてあちこちを短絡させて音を出すという演奏だった。
演者自身もどんな音がでるかコントロールしていないのではないだろうか。でも出てくる音は電子音でありノイズ。それがこんな偶然の形から出てくるのが面白い。

以前Solmaniaがインタビューに答えていて、演奏時の音の9割以上はコントロールしている、と言っていた。ノイズというのはただうるさい音を垂れ流しているだけだと思われているものに対して、いやそうじゃない、という意味でそう答えていたのだろうと思うけれど中田粥の演奏はコントロールを放棄しているような感じがする。でもあの演奏の方法も自身で試してあの形になっているのだろうし、他の誰にでもできることでもないだろう。自発的に操作して出す音とある程度の偶発性にまかせて出す音、それを聴く側にはどう違うのかと思ったりするが、音だけを考えれば一緒のような気がする。でもそういうことを考えさせる演奏とうのが面白いと思う。何をやっても音が出ていればノイズなのだから大層自由なジャンルではあるな、などと思ったりした。

凶暴な音が鳴っている割には、なんだか和やかな感じのするライブで、いい気分になって帰ったのでした。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

2019年、米国、マイケル・ドハティ監督

環境テロリストによって呼び覚まされた4大怪獣の大決戦映画

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巷では評判の良さ気な本作ですが、今ひとつのれなかった。なんでだろう。昨年のギレルモ・デル・トロ監督作『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た時にも同じような感じを味わった。
怪獣映画が好きな人が作った現代の怪獣映画というものがだめなのだろうか。しかし庵野秀明監督作の『シン・ゴジラ』も同じことだと思うけどあれは面白かったのだよな。
ド派手で面白要素満載なのになんで面白いと思えなかったのかよく分からない。なんか戦ってはるなあ、と淡々と観てしまった。キングギドラなんてソフビの人形を飾ってるくらい好きなのに

空母いぶき

2019年、日本、若松節朗監督

20XX年、日本の領土である離島に東亜連合が上陸、占拠した。国土防衛の為に島へ向かう空母いぶきと艦隊は更に攻撃を受け戦争への危機が高まる。
原作は、かわぐちかいじの漫画作品。

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映画を観に行くと本編上映の前には必ず近日上映作品の予告編があって、そういうものを観るのは好きなのです。映画が始まるまでの空気を暖めてくれるし、予告編を観て面白そう観に行こうと思うこともあるから。しかし日本映画というのは予告編で必ず、泣き崩れながら叫ぶ主人公、というものがでてきて、これを観ると「またか」とか「まだこんなことやってんのか」と思って全く観に行く気がしなくなります。激情を表現するのにあーゆー通り一篇の演出、というか型で演じるのはいい加減にやめた方がいいと思います。歌舞伎じゃないんだから。

『空母いぶき』は予告編でそういうものがなかったのと、少し前に『ハンターキラー』という米国の潜水艦ものの映画を観て、戦争が起きるかも知れない映画として日本映画はそういうものをどう描くのかなと興味があったので観に行ってきました。

ちょっと偉そうな言い方になってしまうけれど「意外とやるやん日本映画」というのが正直な感想です。気になるところはいっぱいあるけど、でも頑張ってると思いました。端的に言えば結構面白かった。

日本映画で苦手なのは、濡れ濡れの情念が満載でくどいのが嫌なのです。そういうものの良さもあると思うけれど、なんかやっぱり演歌なんですねと思ってしまう。
本作は空母いぶきの艦長を演じた西島秀俊がもの凄くクールで合理的な判断をするという役柄でそれに従う艦隊や隊員たちも黙々と職務をこなすという感じなのが良かったです。原作がそうなのかな。未読です。

それと、アメリカ映画というのは強大な軍事力を持ってる国の映画なので戦争になるかも知れない映画であったとしても「いざとなったらやったる」という気概が満ち満ちていると思うし、しょっちゅう戦争をしている国なので戦争が始まるかも知れないといってもハードルが日本より低いと思うんですよね。それに比べて日本は太平洋戦争が終わってから海外派遣などはあったにしても公式には他国と70年以上も戦争していないわけですから戦争が始まるかもしれないことに対する歴史の重みが随分違う。憲法戦争放棄を謳っていますし。そういう日本という国の事情も描かれていてよくできてると思いました。これも原作がよくできてるからなのかも。未読ですが。

これはいらんやろ、みたいなところはいっぱいあったんですよね。いぶきには偶々記者が二人乗り込んでいて、規則を破って現場の状況を本社に伝えるのですが、編集部がその情報を伝えようとする場面が凄く緊張感が削がれる。斉藤由貴が凄腕編集長みたいな役ですけど、そういうの必要ですかね。
それと中井貴一が店長のコンビニが並行して描かれるけれど、これは戦場の緊迫感と内地の平穏さの対比みたいなのを描きたかったのかな。でもこれも緊張感ががっつり削がれる。
あと市原隼人はあかん。いぶき艦載機のパイロットの役だけどあかん。他のキャラクターがくさい情念みたいのを抑えた人物像なのに市原は出てきただけでもうくさい。あんなヤンキーの中学生みたいにほっそい眉毛のパイロットおるか。あほか。役作りの為に太ったり痩せたりする俳優が世の中には沢山いるのに眉毛くらいなんとでもなるやろ。ほんまに。ちゃんとせえ。

東京瓢然/町田康 著

東京、若しくは近郊で瓢然と旅することを目指して町をうろうろする随筆集。 

東京飄然 (中公文庫)

東京飄然 (中公文庫)

 

 町田康の『告白』を読んで、あまりに素晴らしかったので他の本も読もうと思い手に取った一冊。
都電の早稲田近辺、鎌倉から江ノ島、新橋から銀座、そして上野の美術館、高円寺のライブハウス、と著者が瓢然を目指してうろうろしつつ、そこで見聞きしたことや脳内の雑念などが記されている。
面白い。面白いけれどこれは町田康が書いていると了解して読んでいるから面白いのか、町田康の文章は町田康にしか書けないから面白いのかよく分からなくなる。

上野で美術館を出て瓢然とビールを飲むことを目指し上野駅に辿り着いた町田康はラーメン店の前でインスピレーションを得て『夜のサルビア』という題名の詩を着想する。

おまえは夜に咲くサルビア
昼に咲けない悲しい花さ
蛤のお吸い物は貝殻が邪魔だね
夜中の蛤、体に毒よ
そんな優しい言葉のなかに
サルビア
サルビアだけが咲いている

この詩を町田康は「恐ろしいほどの愚作であった」と書いているけれど、もし現代詩手帖などをぱらぱらとめくっていて、シリアスに言葉の芸術を目指している詩たちの中に『夜のサルビア』が混じっていたら作者が誰かは知らずとも「この詩を作った人はたぶん良い人」と思うのではないだろうか。
しかし元暴走族の総長で今はイタリアンレストランを複数経営していて愛車はマセラッテイみたいな人の書いた『サクセスの秘訣』的な自己啓発本の中にこの『夜のサルビア』が挿入されていたら「食中毒で営業停止になるかランドクルーザーと事故ってマセラッティの横腹がべこべこになればいいのに」と思うだろう。

誰が書いているかを知らずに読むことはなかなか難しいし、知っているがゆえに先入観を持って読むことで良い面も悪い面もある。でもインターネットの海の中で何処の誰かも知らない人の文章を読んで好ましいと思うこともあるし、どうなんでしょうね。

Shipwrecker's Diary/ Prurient

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USのマゾンナとも称されたPrurientの2004年作。
格好良い。その音がマゾンナと比べられるのも分かる気がする。緩急でうねりを作り上げるノイズで、スピード感のあるロックンロールを聴いているような肌触りがある。音色も種々様々でサイケデリックな酩酊感もある。格好良い。

Prurientはドミニク・ファーナウ(Dominick Fernow)という人がやってる一人ノイズユニット、最近はVatican Shadow名義でテクノもやってるらしい。しかしPrurient名義でもまだまだ活躍中で最近ごっついBOXセットが出たんちゃうかな。2万円くらいするから買えないけど。
ノイズの盤はこういうコレクター心をくすぐる盤が時々出て、SolmaniaのBOXとかINCAPACITANTSのBOXとかMASONNAのBOXとか出て欲しくなってしまうのが困る。買えないから悔しさを胸に秘めて眠るだけだけど。

 

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