ブリューゲル「バベルの塔」展@国立国際美術館

大阪中之島にある国際美術館に「バベルの塔」を見に行ってきました。

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目的は、この絵です

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http://babel2017.jp/images/original.jpg

凄く小さいんです。想像ではもの凄くでかい絵だと思ってた。細かいところまで描かれてる絵だから。それが実物は畳半畳くらいの絵でその小ささにびっくりした。こんなに小さい絵なのに図版でみたような細かいところまで描き込んでいるということに驚愕した。
とは言え一枚の絵をじっと見続けるということはできなかったのです。列に並んで「立ち止まらずに御鑑賞下さい」という感じで見なければならなかったのでつぶさに観察するというわけにはいかなかった。16世紀に描かれた世界で一枚の名画をみんな見に来てるわけだから仕方ない。混んでる美術展というか名画の展覧会というのはあーいう感じなんですねというのがよく分かった。

他にも16世紀のオランダ絵画が沢山見られて、中でも良かったのは作者名不詳で「枝葉の刺繍の画家」と呼ばれている作者の『聖カタリナ』。なぜか清々しい気持ちになる絵でした。

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File:Master of the Embroidered Foliage - St. Catherine.jpg - Wikimedia Commons

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良いテロリストのための教科書/外山恒一 著

現代のファシスト外山恒一氏が語る日本の新左翼史。 

良いテロリストのための教科書

良いテロリストのための教科書

 

 

外山恒一氏を2007年の東京都知事選での政見放送で覚えている方もおられると思う。

www.youtube.comしかし彼はこれだけの人ではない。今も偽選挙活動などと称して、選挙期間中に「外山、外山でございます」と立候補もしてないのに車で回ったりしているような人である。どうも面白い方向に表現してしまう人だけれど、思想家としてそれなりの人なのだ。

第五回外山恒一賞として宮崎の『サルママ』というミニコミを取り上げているが、その受賞理由が書かれた文章に

そりゃ東京や京都にでも出りゃ“面白い”人やモノにいくらでも出会えるでしょうよ。しかしそれはオマエが生み出した“面白さ”じゃないだろう。どこでもいいが、とりあえず自分がいるところを“面白く”できないような奴はしょせん消費者なのだ。宮崎くんだりで生まれた『サルママ』を読んで反省しろ。

とある。けだし名言だと思う。

第五回・外山恒一賞 受賞者発表|我々少数派


そんな外山恒一の最新著作は、なんとあのネトウヨ御用達の出版社、青林堂から出ている。本屋さんでも嫌韓や某下衆美容外科の本と並んで置いてあった。
内容は、ネトウヨ新左翼の歴史を概説するというもので、架空のネトウヨ個人を想定して彼に新左翼の歴史を説明するという体になっている。なので架空インタビューのような形式で、この構成のおかげでとても読みやすい。

共産党から学生運動華やかなりし頃の諸派など名前を聞いたことがあるブント、革共同革マルノンセクトラジカル、東アジア反日武装戦線など、どういう出自の人達なのかが解説されていてとても面白い。新左翼史をこれほど分かり易くかつ面白く解説した本はなかったのではないだろうか。

ネトウヨに「敵を知れ」という意味で左翼史を解説する内容なので当然だとは思うが、ちょっと外山氏はネトウヨに気を使いすぎ、優し過ぎじゃないかと思いながら読み進めたが、終盤ではネトウヨたちの主張に論理性が掛けていることをあげつらい苦言が満ちていて外山恒一が決してお仲間ではないことを示している。しかしネトウヨなんて論理的整合性に悩んだりしないんだから言っても仕方ないし感情で反発するだけだよな、とも思う。ネトウヨがこの本を最後まで読んで影響されればそれに越したことはないだろうけど

Asian Meeting Festival 2017@京都METRO

昨年に続き開かれた、アジア各国から集まった即興、前衛、実験音楽家たちが共演する大饗宴。

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出演は
dj sniff(香港)香港在だが日本人/キューレーター
ユエン・チーワイ(シンガポール)/キューレーター
C. スペンサー・イェー(ニューヨーク)台湾生れ
イ・カホ(クアラルンプール)
カリフ8(マニラ)
グエン・タン・トゥイ(ハノイ
張惠笙(台南)
ムジカ・テト(ヤンゴン
アーノント・ノンヤオ(チェンマイ

ここに日本から
YTAMO(京都)
YOSHIMIO(奈良)
中田粥(大阪
岡田高史(岡山)
が加わって即興演奏を繰り広げるのです。

会場には遅刻して到着。京阪電車が止まってて。四条から神宮丸田町まで歩いたよ。

■張惠笙×ムジカ・テト×アーノント・ノンヤオ×YTAMO
張惠笙は女性のボイスパフォーマンス、ムジカ・テトはコントラバスを横倒しにして弾き、アーノント・ノンヤオはエレクトロニクスの機材とカメラで音と不思議な映像を照射していて、そこにYTAMOのシンセが絡み合う展開。ムジカ・テトの音が最初はよく聴こえなかったが慣れてくると次第にその音が浮き彫りになって演奏の展開をリードしているような雰囲気もあった。アーノント・ノンヤオの演奏はノイズと言えるものだと思うが、タイにもノイズの人がいるのが心強い。演奏後のムジカ・テトの笑顔がとても印象的。

■ユエン・チーワイ×グエン・タン・トゥイ×YOSHIMIO
ユエン・チーワイはエレクトリックギターを弓で弾き、グエン・タン・トゥイはベトナムの琴を弾く。そこにYOSHIMIOのドラムと声が混ざり合う。グエンは琴を弓で弾いたりボデイを叩いてリズムを奏でたりあらゆる奏法で演奏していた。小柄な女性だったけれど見ていてとてもエネルギッシュ。

■C. スペンサー・イェー×イ・カホ×中田粥
C.スペンサーは最初ボイスパフォーマンスから入って途中からヴァイオリンへ、イ・カホは中国のフルートを数種類持ち替えて次々に演奏、そして中田粥は剥き出しの基盤でできたシンセ(?)を塔のように組み合わせて予測不能なノイズを発信していた。中国の笛の音なんてこの演奏の中では埋もれてしまいそうなものだけど、きっちり存在感を示していた。そしてC.スペンサーのヴァイオリン演奏は凄い。あんなヴァイオリン聴いたことない。

■dj sniff×カリフ8×岡田高史
3組目の演奏終盤から続けて最期の組の演奏が始まった。dj sniffはターンテーブル、カリフ8はサンプラーとミキサーを縦横無尽に駆使して爆音を紡ぎ出し、岡田高史のドラムがロック的なダイナミズムを生み出す。ロック・ノイズとも言えるような演奏で圧巻だった。カリフ8は手元を見てると滅茶苦茶な巧者で貫禄があってこの人は本当に凄い人だと直感した。dj sniffはターンテーブルを叩いたり打ち付けたりして演者の方もかなりヒートアップしていたと思う。

全ての演奏が終わると出演者がバーカウンターで談笑しているのも微笑ましい。カリフ8がいたので「you the best!」って伝えたけど意味は通じただろうか。握手してくれたけど。彼のカセット作品も物販で買った。

このツアーは福岡、京都、仙台、札幌で行われます。普通、海外から演者を招いて日本をツアーするとなれば東京では必ずやると思うのだけれどそれがない。昨年、一昨年のこのフェスでは勿論東京での演奏はあったのだけれど今回はない。
アジア各国なんてパリ、ロンドン、ニューヨーク、東京といった世界の中心都市からすれば地方のような周辺だろうけれど、そこから集まって来た人たちが日本の地方をツアーして回るということがとても面白いと思うのです。なんだか東京に対して「地方でも面白いことやってるんですよ」と言ってるみたいで。これはこのフェスの総合監督である大友良英さんが現在、札幌芸術祭のディレクターを行っていることからもそういう思想があるんじゃないだろうか。大友さんは京都のAM放送であるKBS京都で長らく深夜のラジオもやっているし、福島でのプロジェクトにも参加していて在東京の人ではあるけれど地方人としての視点も持っている気がするのです。
東京が中心であることには異論を挟む余地はないのだけれど、アジア最先端の音楽が東京以外で演奏されるということに少しシニカルな目論みがあるあると思うのは穿った見方でしょうか。

asianmusic-network.com

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BABY DRIVER

2017年、英米エドガー・ライト監督作

強盗犯の手助けをする青年、ベイビーは凄腕ドライバーだったが、やむを得ぬ理由で犯罪に加わっていた。やがてその理由も失せ、犯罪から手を洗ったはずの彼が、最期の仕事に挑む・・・

www.youtube.com

この映画、米国が舞台なのでハリウッド作かと思うと英国の映画製作会社、WORKIN TITLEの製作なんです。WORKING TITLEというと『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ノッティングヒルの恋人』、『ラブ・アクチュアリー』などの英国製ロマンチック・コメディーを送りだしている会社で、他のラインナップを見てもコメディーやハートウォーミングなお話が多いのです。
なので本作『ベイビー・ドライバー』も殺伐としたお話じゃない。

逃走を手助けする運転手を描いた映画というとウォルター・ヒル監督の『ザ・ドライバー』、ライアン・ゴズリング主演、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作の『ドライブ』があるけれど、この2作は男臭いんですよね。ハードボイルドで殺伐としてる。そこが良いのだけど。

本作『ベイビー・ドライバー』は、その名も「ベイビー」と呼ばれるような若くて男前の青年が主人公で男臭さはナッシング。そして犯罪者の集団もどこかコミカルに見えてしまってあんまり恐くなんです。後半バタバタと結構人が死んでエグイ殺し方もあるんだけど、どこかシリアスさに欠けるのです。その軽さが良いという人もいると思うのだけど、ちょっと物足りない。
面白いとは思うんです。つまらなかったわけじゃないんです。でもなんだか底流に明るいムードが流れていて殺伐さに欠ける雰囲気がちょっと物足りなかったかな。

八月二十六日@心斎橋 火影

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心斎橋の火影というライブハウスに行ってきました。出演は

Macrochord
Fortitude
Napalm Death Is Dead
MASONNA
GASOLINE
Noise A Go Go's

の計6バンド。MASONNA目当てで行ってきましたが、GASOLINEはあの四日市が生んだ偉大なガレージロックバンドでした。同じ名前のバンドかなーと思ってたけど、お楽しみが増えた。他のバンドは全く知らなかったのです。

最近はノイズのライブしか行ってなくてロックンロールのバンドのライブというのはとても新鮮な感じがした。そうだよなあ、こういう感じで盛り上がるんだよなあ、というのを思い出した感じ。どのバンドも盛り上げ上手でそれぞれファンがいて会場の雰囲気が楽しい。ロックをもっと聞くべきだなと反省したり。

Napalm Death Is Deadは、ベースとドラムの二人組でグラインドコアをやろうとしているバンドだった。機材トラブルのようでベーシストが楽器を放り投げてあっと言う間に終了してしまったけれどもう一度見てみたいバンドでした。

MASONNAはいつもと同じ。なので最高。

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(セッティング中のMASONNA

 

GASOLINEはやっぱりサービス精神旺盛で客を巻き込んで笑いあり爆音ありのロックンロールを聴かせてくれました。あー楽し。
終演後VoのGANさんがいたので「いつまでも最高で居て下さい」と声を掛けておきました。娘が高校生で色々大変らしいです。 

www.youtube.com


 

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