スキャナーズ

1981年、カナダ、デヴィッド・クローネンバーグ監督作
人間の心を読み相手を自在に操れる超能力者スキャナーを巡る陰謀とスキャナー同志の闘いの物語。

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リストア版というものを観ました。だから画質が綺麗だったのかなあ。81年の映画なのにもの凄くクリアな映像でした。そし画面に格がある。クローネンバーグの映画というのはそれほどファンというわけでもないのだけれど、新作が公開される度に話題になって評価も高いので見ておかないとという気分にさせられるので幾つかは見ている。
この作品もクローネンバーグ初期の作品ということで名作の誉れの高い作品だけど、不穏な空気が滲みまくっていて、やはり評価が高いのが頷ける。不安になるんですよね、観てると。
その不安は音の影響からくるものも大きいような気がします。音楽もそうなのだけど、音の無い場面というのが多い。ずっと何かしらのBGMが鳴ってるような映画は少し鬱陶しいでしょう。音の空白の部分が多くてそれが、言い様の無い空虚さみたいなムードを醸し出してる。こういう静かな映画は好きです。

超能力者の対決はお互いの心を読む、という映画的に地味にならざるを得ない闘いを派手に演出してるのが素晴らしいです。役者の演技に依るところが多いけれど、どれも熱演で、悪役のマイケル・アイアンサイドが良いんですよね。この人沢山映画に出てるけど名作『スターシップ・トゥルーパーズ』が印象深いです。ポール・バーホーベンのバカ映画だけど名作です。

最初のスキャナー対決で頭が吹っ飛ぶ場面は、ルネ・マグリットの『快楽原則』ですよね。

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ワイルド・スピード ICE BREAK

2017年、米国、 F・ゲイリー・グレイ監督

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やり過ぎなんじゃないでしょうか。

前作『SKY MISSION』から秘密組織の別働隊みたいな扱いになってきて、アウトローから公権力側になってるんですよね。なんだか初期シリーズにあったやさぐれ感が薄くなってるんです。全部カート・ラッセルが悪いと思います。カートのせい。この人大好きだけどリアルさという意味では向いてないんじゃないでしょうか。カート・ラッセルが出てくると現実の世界が舞台のような気がしないから。『NY1997』のイメージが強過ぎるのかも知れんけど。

対して、前作で悪役として出て来たジェイソン・ステイサムが良い味出してます。この人が出てくるシーンは何だか心躍るものがある。終盤の飛行機の中での大立ち回りもそこここにギャグが埋め込まれていて英国紳士だなーと思います。

全体的に車で追いかけっこしなければならない必然性が少ないんじゃないでしょうかね。ワイスピシリーズはカーアクションの映画なわけで、カーチェイスをするにはそれなりの理由がいる。軍隊みたいな組織の外注をやってることになってるんだからヘリでも飛行機でも登場させられるわけで、それを車で追わないといけない必然性みたいなのは感じさせて欲しいのです。なんで車で追っかけるの?ヘリ出せばいいやん、と思ったら負け。

それでもNY市街でのカーチェイスは見所満載だし、雪原を走るランボルギーニという異様な絵柄は感動的でもある。でもカーチェイスはやっぱり市街地でやるから面白いと思うんですよね。悪くないけど。

このシリーズ、最後の場面で次回作に繋がる場面がちらりと明かさせる、というのがお楽しみなのですが、前作ではそれがなかった。今作ではどうなのかとエンドタイトルが始まってもお客さんが誰も席を立たなかったのはそれが有るかもしれないという期待だったと思うのだけど、その期待は裏切られたのでした。

ワイルド・スピード SKY MISSION

2015年、米国、ジェームズ・ワン監督

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おなじみのキャラクターたちで構成されたファミリーの面々は、前作では国際警察に悪者を捕まえる手助けを依頼されたわけですが、今回は軍(?)の秘密組織みたいなところから色々依頼されます。もう秘密戦隊っぽくなってる。
空を飛ぶ飛行機から出撃するわ、無人機からロケットで攻撃されるわ、相手はテロリストだわ、ともうどこまでこの作品はいくのでしょうか。

本作で一番大事なのはブライアンを演じるポール・ウォーカーの遺作であること。撮影半ばで交通事故により亡くなってしまいました。ポール・ウォーカーはこのシリーズでは『x3 TOKYO DRIFT』以外には全て出演していて、ドム(ヴィン・ディーゼル)とポールウォーカーの二人が主役のシリーズだったわけで、彼がいなくなると本作はどうなるのか、と言われていましたが、CGなども含めて上手くお話をまとめています。

監督が3,4,5,6と続いたジャスティン・リンからジェームズ・ワンに変わったせいもあるのか過去作からの引用や繋がりは少し薄めですが、それでも辻褄が合うように色々と仕掛けはあります。

ラストシーンでは次回作に対する繋ぎが登場するこのシリーズですが、本作ではその点は見られません。それでもポール・ウォーカーヴィン・ディーゼルの別れと回想シーンではシリーズを通して見てきた者にとっては落涙必至。こんなん泣いてまうやろの世界。

 

ということで、ワイルド・スピードシリーズの復習も済んだので現在公開中の8作目『ICE BREAK』を観に行ってきます。

ワイルド・スピード EURO MISSIN

2013年、米国、ジャスティン・リン監督

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シリーズも6作目となり、大作映画の貫禄も十分に備わってきた本作。もう日本車はあんまり出てこないし、ストリートレーサーのお話からは程遠くなっています。

シリーズの1,2,3作目はストリートレーサーのお話。

4,5作目はそのストリートレーサー出身のアウトローが義賊的に活躍するお話でした。

6作目である本作からは、お馴染みのキャラクターたちが終結して公権力から悪い奴等を捕まえてくれ、って依頼されたりします。シリーズを重ねると立場が変わるもんですな。

ワイスピシリーズが面白いのはカーアクションの映画としての面白さもさることながら過去作との繋がり方がちゃんとしてるんですよね。いったん死んだと思われたレティ(ミシェル・ロドリゲス)が復活してしまう本作なのですが、その理由がそんなに無理やりって感じじゃない。他にも2作目に登場したブライアン(ポール・ウォーカー)の同僚のFBI捜査官が出てきて因縁も繋がっているし、この同僚の捜査官は『x2』ではブライアンに殴られて鼻を怪我するんだけど、本作でも鼻を怪我します。ちゃんと過去作を見てる人にもサービスがある。
レティとトレット(ヴィン・ディーゼル)がロンドンの街中をレースで爆走するシーンがあるのですが、ロンドン名物2階建てバスの中から子供が暴走する2台を見つめるシーンがあって、これは『TOKYO DRIFT』でも同じシーンがある。細かいところにサービスが行き届いているのです。

エンディングでは第6作の後に『x3 TOKYO DRIFT』があることが明示されます。そしてこのシーンが『x3 TOKYO DRIFT』との整合性をきちんと整えていて、なおかつ、次作『SKY MISSION』にもしっかり繋がっているという。こういうしっかりした作り方がこのシリーズを人気作品にしているのだと思います。

ワイルド・スピード MEGA MAX

2011年、米国、ジャスティン・リン監督

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シリーズで登場したキャラクター達が再集結する舞台はリオデジャネイロ。街の景色がスラムもストリートも美しく、映像に貫禄があって真の大作映画。

もう日本車のストリートレーサーの映画ではなく、カーアクション映画を追求する形になっていてやりたい放題。それでも登場する車の中にはハコスカや新型のフェアレディZにGTR、そして『4』で活躍したインプレッサも登場する。ちょこっとだけレクサスLFAも出てきます。

リオの街中での警察とのカーチェイスでは、これでもかというくらい車がぶっ壊れて痛快を通り越して笑ってしまうほど。

そして毎度のことながら次回作に期待を持たせるラストが素敵すぎるのです。『アイス・ブレイク』が公開中だけど前作を見てから行かねばならないでしょう。